雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

絶対安全剃刀/高野文子


遠い、そして遠い

絶対安全剃刀―高野文子作品集

絶対安全剃刀―高野文子作品集


意味もなく下らないことで笑い転げて、学校や近所の子供たちが世界の全てで、今にして思えば笑い飛ばしてしまえるぐらいの悩みや不安が真剣に話し合われていた、少年または少女のあの頃を誰しもが描けるわけではないだろう。子供でいることが嫌でたまらなく、一刻でも早く大人になってしまいたいと思い続け、背伸びをしては難解な哲学や政治に興味を示してみたりした、肉体と精神の不釣合いな成長期は、ただ恥ずかしい思い出しか残さなかったように思えるのだが、それでも忘れられない瞬間のような思い出は微かにあるのだ。
高野文子のこの作品集はそんな瞬間を捉えきっているように思う。
少女であり少年であり性差の発現する前の遠い微かな記憶がふとよみがえってくる。