遠い、そして遠い
- 作者: 高野文子
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 1982/01/14
- メディア: 単行本
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意味もなく下らないことで笑い転げて、学校や近所の子供たちが世界の全てで、今にして思えば笑い飛ばしてしまえるぐらいの悩みや不安が真剣に話し合われていた、少年または少女のあの頃を誰しもが描けるわけではないだろう。子供でいることが嫌でたまらなく、一刻でも早く大人になってしまいたいと思い続け、背伸びをしては難解な哲学や政治に興味を示してみたりした、肉体と精神の不釣合いな成長期は、ただ恥ずかしい思い出しか残さなかったように思えるのだが、それでも忘れられない瞬間のような思い出は微かにあるのだ。
高野文子のこの作品集はそんな瞬間を捉えきっているように思う。
少女であり少年であり性差の発現する前の遠い微かな記憶がふとよみがえってくる。