雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

語りの海 吉本隆明〈1〉幻想としての国家/吉本隆明


素材を存分に活かし、その美味しいところを味わあせて


吉本隆明の講演集である。
第1巻は国家、および南島について語ったものが中心である。
著作として書き上げられたものに比べて、分かり易い気がする。
それは、何かを伝えようとする時の、呼吸のようなものが、この本には残っているように思う。
それはこの本の編集が巧いということなのかも知れない。
吉本隆明のしゃべり」という素材を存分に活かし、その美味しいところを味わあせてくれる、いわば料理人のような手際の良さかもしれない。
国家を捉えるのはどんな視点なのか、地域と歴史の変換可能性、南島を辺境と捉えるのでもなく、歴史的遺産としても捉えるのでもなく、日本という概念の根底に意義を立てるような捉え方を提示している。
きっと、こういった考えの萌芽のようなものを大事に育てたのが、吉本隆明の他の著作なのだろうと思った。
だからこそこの本はその美味しいところだけが味わえるのかもしれない。