交じり合う
- 作者: 金子光晴
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/11/25
- メディア: 文庫
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昭和の初期の頃だろうか。
マレーシア、インドネシア、シンガポールの辺りを金子光晴が放浪していた頃の紀行文、と書いてみると、この本のことを書いた気がしない。
ここに書かれているのは、眼前の事物と聞き書きと詩人の印象が渾然となっている。
熱帯の風景なのに、とてもひんやりとしたものを感じる。
それは詩人の視線が醒めているからだろうか?
西欧的な意味での貧困にあえぐ人々が描かれているからだろうか?
西欧中心の植民地支配の文脈に配置されたことにより、東南アジアは貧困という意味を担うことになった姿は、一元的な見方に過ぎない。
国という枠に縛られずに、交じり合う諸民族の姿に、金子光晴は何かを見出したのかもしれない。
それが何であるかは、読む側に託されいるような気がする。