何となく、小説が読みたくなって、本棚を漁っていたら、池澤夏樹の「真昼のプリニウス」が眼についた。
持っているのは単行本だ。
あの頃は、池澤夏樹の新刊が出るたびに、買っていたような気がする。
主人公の女性の火山学者、そして物語の結末については覚えていたのだが、物語の中間のエピソードや、その他のディテールはほぼ忘れていた。
まず気になったのは、語り口や小道具に1980年代的なあざとさを感じてしまう。
一方、物語そのものはちょっとエキセントリックな気がする。
酔い痴れるための物語ではない。
物語の有効/無効をめぐるメタフィクション的でもあり、物語批判でもあるように見える。
そういった言説自体が、1980年代的な磁場に絡めとられているような気がする。
これは良くできた小説なのだろうか。
そう考えさせてしまう点で、良くできた小説なのだと思う。
- 作者: 池澤夏樹
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1993/10
- メディア: 文庫
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (32件) を見る