雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

真昼のプリニウス/池澤夏樹


何となく、小説が読みたくなって、本棚を漁っていたら、池澤夏樹の「真昼のプリニウス」が眼についた。
持っているのは単行本だ。
あの頃は、池澤夏樹の新刊が出るたびに、買っていたような気がする。
主人公の女性の火山学者、そして物語の結末については覚えていたのだが、物語の中間のエピソードや、その他のディテールはほぼ忘れていた。
まず気になったのは、語り口や小道具に1980年代的なあざとさを感じてしまう。
一方、物語そのものはちょっとエキセントリックな気がする。
酔い痴れるための物語ではない。
物語の有効/無効をめぐるメタフィクション的でもあり、物語批判でもあるように見える。
そういった言説自体が、1980年代的な磁場に絡めとられているような気がする。
これは良くできた小説なのだろうか。
そう考えさせてしまう点で、良くできた小説なのだと思う。


真昼のプリニウス (中公文庫)

真昼のプリニウス (中公文庫)