雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

絶望の精神史/金子光晴


金子光晴のエッセイである。
明治以来の日本人の精神を告発するエッセイとでも言おうか。
明治はヒゲの時代であり、大正は見せかけの自由が関東大震災で剥がれ、昭和の敗戦前は人の心の弱みに付け込んだ姿が、そして敗戦後はそれらがなかったかのように立ち直る。
だが、金子光晴はそれらに対して、江戸時代は良かったとか、今が良くなったとか、そんなことは言わない。
日本人には本当に絶望して欲しいと言う。
本当の危機に出会ったことがないアイデンティが温存され、その臆病さが裏返しの残虐性となりアモック(狂乱)として現れる。
金子光晴はさまざまな身近な人々の姿を描き、いかに零落してしまったを描く。
容赦なく描き、その精神の根底を抉り出そうとする。
この本に書き付けられた言葉へ、反論する言葉を私はまだ知らない。

絶望の精神史 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

絶望の精神史 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)