この本もまた図書館で借りた本である。
実は池波正太郎の本を読むのはこれが初めてだ。
今まで何人かの友人が薦めてくれたり、テレビで「鬼平犯科帳」を観た事もあるのだが、正直なところ、時代小説に食指(読指というべきか?)は動かなかった。
では何故、今更ながらにこの本を読もうかと思ったのか。
それは、この本に出てくる「山の上ホテル」の「てんぷら山の上」のエピソードである。
かつて、「てんぷら山の上」の料理長だった近藤文夫氏がテレビで取り上げられていたのだが、生前の池波正太郎に乞われ、病室に天丼を届けたというのが紹介されていた。
その数日後、池波正太郎は亡くなったそうである。
つまり、ほぼ「最後の晩餐」とも言うべき食事が、近藤氏の作った天丼なのだそうだ。
池波正太郎についても作品についてもよく知らないが、日々の生活がこの本には淡々と綴られている。
銀座を散策し、写真やスケッチに留め、様々な外食と映画の試写会に出かける。
(もちろん、その中に近藤氏との交流も語られている。)
そして、老いてゆく自らの肉体の様子、亡くなってゆく友人たち、気学(と称する占い?)に照らし合わせて一喜一憂し、現代を憂う、そういった雑多な日常が描かれている。
だがここでは、池波正太郎の生活や考え方については、語れるほど判っていないので置いておく。
そうすると老いるとはどういうことか、それを自覚しながら生活することはどういうことか、そんなことを考えてしまう。
食べたいものの好みが変わる。
かつて美味だと思ったものがそうでもなくなる。
身体に気を使い、うまくやり過ごす方法を探す。
思い出について考えることが多くなる。
などなど
さて、自分の「最後の晩餐」には、何を頼みたいだろうか。
- 作者: 池波正太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1991/03/27
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (40件) を見る