文芸評論にちょっと触れたことがあれば、吉本隆明の名前は耳にしたことはあるだろう。
私にとっての吉本隆明との出会いは、角川文庫の「共同幻想論」であり、高校生の脳味噌にはちょいと難しすぎた。
それでも、読み続けてしまったのは、やはり見ないふりをして通れない言葉がそこにあるからだと思う。
さて、この本では「老い」について、インタビューに応じる形で語っている。
どの著作だったか忘れたが、情況に向き合い発言を続けるのが、自らのモラルなのだという。
自らの「老い」という情況、またそれを取り巻く環境や社会をも、冷静に分析し発言している。
それは愚痴でもなく、説教でもなく、悟り済ましているのでもない。
精神と肉体のギャップ、介護について、死についてなど、様々な角度から「老い」について光を当てる。
「老い」について自らを通して考え続ける吉本隆明の姿は、(サイバーパンク風に言うなら)これぞ「エッジ」の塊で、時代の最先端を疾走している。
吉本隆明を読むということ、そのこと自体は、吉本隆明という人間を知ることなのではない、とふと思った。
吉本隆明というメディアを通して、「情況」を考える手掛かりを得ること、それが重要なのだと思った。
- 作者: 吉本隆明
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/08/07
- メディア: 文庫
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