雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

井上井月

井上井月は、幕末から明治初期の頃の俳諧師である。
故郷の越後長岡を捨て、江戸や京、大阪を放浪した後、長野県伊那谷に住み着き、あちこちの家に居候した挙句、田んぼの中で行き倒れ同然の姿で客死したという。
乞食井月とも言われていたというその姿は、つげ義春氏の「無能の人」のなかでも描かれ、石川淳氏の「諸国奇人伝」では、伊那谷に真蹟を求め、墓参する紀行文と共に井月のエピソードが触れられているし、最近は様々な評伝も出されているようなので、特にここでは触れない。
この本は井月の遺した俳句から、春日愚良子氏が300句を選び、其々に短い解説を添えている。
私のような俳句に詳しい訳でもない人間にとっては、ちょっとありがたい面もあるのだが、句そのものを感じようとすると、ちょっと邪魔な面もある。
なるべく解説を読まないように読み進むうちに、見えたものの動きを事物の対比によって鮮やかに切り取るテクニックや、放浪から滲み出てくる孤独、そして深い悲しみがあるように思えた。
ここで句そのものを挙げたりはしない。
だが、上記に挙げたような、決して古びない句の魅力というものが存在する。


井上井月 (蝸牛俳句文庫)

井上井月 (蝸牛俳句文庫)