雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ア○ス/しりあがり寿


「ア○ス」とは「アリス」のことだろう、と思ったのが最初に読んだ時の感想だったと思う。
つまり、「不思議の国」や「鏡の国」を遍歴する少女を連想させる。
だが、主人公は「ナオミ」という少女である。
どうやら狂気の中にいるらしく、繰り返される「トモダチ探し」と、悪夢のような不条理な出来事が綴られる。
会話にならない会話、繋がりのよく判らない出来事の連鎖、そして主人公の感じている哀しみや孤独や不快感が溢れてくる。
しりあがり氏の絵も、わざとバランスを崩したり、執拗なまでに描きこまれていたり、主人公の不快感を意図しているようだ。
主人公にとってこの世界は耐え難く、求めるものは手に入れることはできない。
この世界の中に主人公の居場所は無く、「トモダチ」を探しているのに、自分を見つけてしまったりする。
これは「正気」な人が想像する「狂気」の世界なのだが、それも了解済の上で、その作り上げられた「狂気」の世界を読むのか?
主人公の「ナオミ」は手術により、狂気の世界から抜け出し、正気の世界に溶け込むことが出来るようになる。
だが、そうして手に入れた日常に、かつての狂気の世界がふっとよぎったりする。
主人公にとって、この耐え難い世界は依然として耐え難く、狂気の中にいた時に感じた孤独は孤独のままに存在して、それでもこの世界を遍歴していくのだろう。
そしてその感覚に共鳴している自分がいる。


ア○ス (レヴォルトコミック (1))

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