雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

芭蕉紀行文集/松尾芭蕉

この本は、
野ざらし紀行
「鹿島詣」
笈の小文
「更科紀行」
「嵯峨日記」
の5篇が集められている。
私は松尾芭蕉を深く研究したこともなく、俳諧について語れるほどの造詣も持ち合わせてはいない。
だが、この本を読んで思うのは、「生きる」ということと同じレベルにおいて、「旅」と「俳諧」とが並べられているようだ。
現代における「旅」とはレジャーであり、生活から離れる非日常の時空としての意味があるように思う。
そしてまた、「俳諧」も詩歌の一ジャンルとして、また趣味として詠まれているのだろう。
それに対し、例えば「野ざらし紀行」では野ざらしになる覚悟で旅に出る。
地の文で、あまり心情や考えは述べられないが、全ては17文字の句に籠められる。
旅を生活の基盤として、様々な出来事を紀行文として事細かに表すのではなく、そこで詠む句にだけにアウトプットしているようだ。
これは、俳諧を研ぎ澄ますための、そして、松尾芭蕉自身の感覚を研ぎ澄ますための、実験だったのかもしれない。
そんなことを思った。

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1)

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1)