この本は、
「野ざらし紀行」
「鹿島詣」
「笈の小文」
「更科紀行」
「嵯峨日記」
の5篇が集められている。
私は松尾芭蕉を深く研究したこともなく、俳諧について語れるほどの造詣も持ち合わせてはいない。
だが、この本を読んで思うのは、「生きる」ということと同じレベルにおいて、「旅」と「俳諧」とが並べられているようだ。
現代における「旅」とはレジャーであり、生活から離れる非日常の時空としての意味があるように思う。
そしてまた、「俳諧」も詩歌の一ジャンルとして、また趣味として詠まれているのだろう。
それに対し、例えば「野ざらし紀行」では野ざらしになる覚悟で旅に出る。
地の文で、あまり心情や考えは述べられないが、全ては17文字の句に籠められる。
旅を生活の基盤として、様々な出来事を紀行文として事細かに表すのではなく、そこで詠む句にだけにアウトプットしているようだ。
これは、俳諧を研ぎ澄ますための、そして、松尾芭蕉自身の感覚を研ぎ澄ますための、実験だったのかもしれない。
そんなことを思った。
- 作者: 松尾芭蕉,中村俊定
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1971/11/16
- メディア: 文庫
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