雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

春昼・春昼後刻/泉鏡花

舞台は逗子の岩殿寺の辺り。
他所から逗留している主人公が、岩殿寺の住職から聞いた話と、寺へ至る道すがらに見かけた女性が物語の中心とでも言えよう。
唄うようにうねる泉鏡花の文体は、色彩と植物の名が溢れ、華やかな描写に乗って、春の昼下がりから不気味な物語が展開する。
不気味とは言っても、化け物が出てきて主人公を驚かす訳ではない。
因果応報ということでも無いのだけれど、何かに操られるように、夢の符牒が現と幻の境目を消し去って、死へと向かう一組の男女の姿。
主人公の独白に、
 「目が覚めるから、夢だけれど、いつまでも覚めなけりゃ、夢じゃあるまい」
と言わせるのは、悲劇的な結末に対する、作者の皮肉でもあろうか?