実は、古井由吉については、良く知らない。
持っているのもこの本だけである。
文学史上は「内向の世代」と言われるようだ。
でも、世代で文学を捉えて、それで何かが解かったつもりになっていたとしたら、最初から本を読む必要はないんじゃないだろうか?
ともあれ、この本は今まで読んだ記憶がないので、読んでみた。
主人公は京都から、歴史に登場する寺社や古戦場などを巡っている。
しかしながら、市街化されたちょっと白々しい景色の中を歩き、唐突に史実や歴史物語の世界へと繋がる。
「いかめ房」とは何者だろうか?
解説によると平家物語の登場人物のようだが、この本では主人公の内面の対話者として現れる。
戦場を駆け巡り、時代に対して超越的な立場を体現しようとしている姿として描かれる。
この本は小説であろうか、それとも随筆であろうか。
そんなことはどうでも良いかのように、風景の描写と、歴史物語の幻想と、いかめ房との対話が、境界も無く記述される。
歴史物語に性的な色合いをつけて解釈すること、現在の感覚で歴史物語を見直してみること、その想像力のあり方が、この本における特徴のひとつなのかもしれない。
そんな主人公の歴史物語への想像力に対して、メタレベルでの想像力としていかめ房との対話が存在するのかもしれない。
いかめ房は歴史物語にあって、主人公の想像力の外側から眺めている存在のようだ。
だが、主人公の想像力が客観化されているというのではなく、もうひとつの想像力としてあるようだ。
そして、いささか白々しい景色の旅という現実との重ねあわせにより、想像力が幻想の領域として位置づけられているようだ。
しかしながら、京都に縁が薄く、歴史物語に興味の乏しい私にとって、作者の想像力、幻想のありようは、残念ながら今ひとつ響かなかった。
たぶん、読むべき人が読んだら、もっと楽しめるのかもしれない。
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