笙野頼子と言えば、「タイムスリップ・コンビナート」としか答えられない程度の、聊か恥ずかしくなるほどの乏しい知識しかないので、ちょっと読んでみようかと図書館で借りてみた。
最初期の「極楽」「大祭」「皇帝」の三作が収められている。
これは何の物語なのか、それを説明するのは難しい。
これは紛れもなく小説であり、詩ではない。
小説なのだが、流れている時間は恐ろしく緩慢か、或いは時間は存在しない。
言葉が紡ぎ出されて、積み重ねられていくのだが、それは悪意の色に染められている。
そうだ、
この三作品に通底している(と感じた)のは、悪意なのだった。
しかし、作者が主人公に言寄せて、世界への悪意を語らせている、というだけではなく、むしろ、作者の主人公に対する悪意が満ちているようだ。
主人公たちは、どちらかと言えば、グロテスクで滑稽な姿で描かれている。
物語における、特権的な立場も与えられない。
主人公と作者がイコールで結ばれることもない。
だが、主人公と作者から吐き出される悪意だけは、ここにある。
そう思ってみたものの、これは理解できていることになるのだろうか、という疑念が晴れることはなく、まるでその悪意の重力圏に捉えられてしまったかのように思えてくるのだった。
- 作者: 笙野頼子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1994/11
- メディア: 単行本
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文庫版も出ているようだ。
- 作者: 笙野頼子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/03/09
- メディア: 文庫
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