怪談とは、怖がらせるというエンターテイメントである、と仮に定義してみると、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の怪談は、異なるような気がする。
集められた話は、非日常的であり、気味の悪い話ではある。
だがそれ以上に、人々の思いにまつわる話であるようだ。
例えば、死に逝く者が強く思ったことが、本人の死後も残る話。
また、例えば生前に交わした約束が、死後に違えてしまったが故に起こる話。
残留思念のような思いが引き起こす怪異。
化物が驚かす、と言うよりは、故人の思いが生きている者たちを脅かすという話だろう。
それは、単なる異国趣味や懐古趣味で集められたものではないと思うのだ。
集められた話は、確かに、日本の古典からの引用であるには違いない。
だが、例えば、江戸時代に流行した百物語を紹介した訳ではない。
それまでにあった「怪談」というカテゴリの物語を、その文脈に則って採集したと言うことではなく、様々な文献から取捨選択した強い「人々の思い」の物語だと思う。
- 作者: ラフカディオ・ハーン,田代三千稔
- 出版社/メーカー: 角川書店
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- メディア: 文庫
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