雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

人のセックスを笑うな/山崎ナオコーラ

どんな著者かも知らずに、読み始めて思ったのは、これは少女漫画のような小説だ、ということだった。
私自身は少女漫画を語れるほどに詳しくは無い。
だが、恋愛をテーマとしてそこにファンタジーを見出すのは、少女漫画的なセンスに近いと思った。
そして、描かれる主人公の男性には、女性である著者のあこがれる男性像が投影されているようだ。
そんなことを詮索してもしようが無いので、もう止めておこう。
ひとつ女性ならではの描写だと思ったのは、主人公とその相手との初めてのセックスで、彼女が恥ずかしくなって「途中でニヤニヤし出し」たというシーンがある。
たぶん、男性だったら、このくだりは描けないような気がする。
女性である作者は、なぜ男性の主人公でこの物語を描いたのだろうか。
併録されている「虫歯と優しさ」の主人公は、ゲイのようだ。
作者の山崎氏は、括弧付きの『女性』的なものを、物語の小道具(あるいは舞台?)として採用しない戦略なのだろうか?
だが、上記の描写のようなところに、女性的なるものが滲出してくるのだ。
90°回転するのではなく、敢えて反対周りに270°回転したような、そんな気もする。


人のセックスを笑うな (河出文庫)

人のセックスを笑うな (河出文庫)