雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

幽界森娘異聞/笙野頼子

これは何の本かと言われても上手く説明できない。
物語かというと、そうではないのだけれど、では、詩歌なのかといえば、それは違うと言いきれるのだけれど、では随筆かというと、そのようでもあり、そうでは無いようでもある。
だいたい作者が、フィクションだと言い張っているのだから、これは小説なのだろう。
森娘とは、森茉莉のことのようだが、これも作者が違うと言っているのだから違うのだ。
森娘にまつわるエピソードを題材に、さらにはヤオイ系の源流としての評価を加えながら、返す刀で文芸評論家や、女流作家たちに切り込んでいく。
かと思えば、猫の話、そして佐倉に引っ越した話が続く。
ある意味、私小説である。
むしろ、私小説でなかったとしたら、何と説明できるのだろうか、と、この文章の先頭に戻って堂々巡りをしてしまう。
そもそも作者自身が、これは森茉莉の評伝ではない、辛気くさいモノローグ小説だ、と説明している。
その所為か、この本を読んで森茉莉を読んでみたいとは思わなかった。
しかし、久しぶりに、谷崎潤一郎を読み返してみても良いかとは思った。


幽界森娘異聞 (講談社文庫)

幽界森娘異聞 (講談社文庫)