これは何の本かと言われても上手く説明できない。
物語かというと、そうではないのだけれど、では、詩歌なのかといえば、それは違うと言いきれるのだけれど、では随筆かというと、そのようでもあり、そうでは無いようでもある。
だいたい作者が、フィクションだと言い張っているのだから、これは小説なのだろう。
森娘とは、森茉莉のことのようだが、これも作者が違うと言っているのだから違うのだ。
森娘にまつわるエピソードを題材に、さらにはヤオイ系の源流としての評価を加えながら、返す刀で文芸評論家や、女流作家たちに切り込んでいく。
かと思えば、猫の話、そして佐倉に引っ越した話が続く。
ある意味、私小説である。
むしろ、私小説でなかったとしたら、何と説明できるのだろうか、と、この文章の先頭に戻って堂々巡りをしてしまう。
そもそも作者自身が、これは森茉莉の評伝ではない、辛気くさいモノローグ小説だ、と説明している。
その所為か、この本を読んで森茉莉を読んでみたいとは思わなかった。
しかし、久しぶりに、谷崎潤一郎を読み返してみても良いかとは思った。
- 作者: 笙野頼子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/12/15
- メディア: 文庫
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