雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

クワイエットルームにようこそ/松尾スズキ

著者も知らないし、映画になっていたことも知らなかった。
世間の話題に疎くなっているようだ。
何となく図書館で、一番上の棚にあって、手にとった。
フリーライターの主人公が、恋人と喧嘩の果てに、オーバードーズで救急車で運ばれる。
主人公は精神科病棟に担ぎこまれ、凶暴な患者のためのクワイエットルームで目を覚ますところから物語は始まる。
退院するまでの2週間で出会う患者達と、主人公のエピソードが物語の粗筋と言ってしまおう。
何かがとり立てて特別な小説ではない気がした。
世界を凝縮するための精神科病棟という設定は上手いと思う。
だから、主人公のエピソードは必要だったのだろうかと思った。
主人公が退院する時の恋人との和解、患者達との別れ、何かからの決別が物語の中心のような気がした。
だが、何かから決別したように思える一方で、主人公は何かを抱えながらこれからも生きてく。
そこでは何も解決しなかったのだし、その抱え込んでいるものに触れられると爆発するのだから。
この物語はどこにも向かっていないのではないだろうか。
何かが変わったように見えながら、何かが隠蔽されている、そんな物語に思った。


クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

クワイエットルームにようこそ (文春文庫)