雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

硝子障子のシルエット 葉篇小説集/島尾敏雄

めっきり涙もろくなったものだと思う。
この本は、島尾氏が東京都江戸川区小岩に住んでいた頃の、家族の思い出を中心にした短篇が収められている。
島尾氏の特徴でもある、現実と幻想の境界の薄明を記述するような文体は控えられ、些細な日常が愛おしく、また、繊細に描かれている。
しかも、小岩駅南口の路地裏や、北口の古本屋など、自分にとっても幼い頃に慣れ親しんだ風景が立ち昇ってくる。
家族が寄り添って、昔の東京に暮らしているその姿に、何故かしら涙ぐんでしまいそうになる。