めっきり涙もろくなったものだと思う。
この本は、島尾氏が東京都江戸川区小岩に住んでいた頃の、家族の思い出を中心にした短篇が収められている。
島尾氏の特徴でもある、現実と幻想の境界の薄明を記述するような文体は控えられ、些細な日常が愛おしく、また、繊細に描かれている。
しかも、小岩駅南口の路地裏や、北口の古本屋など、自分にとっても幼い頃に慣れ親しんだ風景が立ち昇ってくる。
家族が寄り添って、昔の東京に暮らしているその姿に、何故かしら涙ぐんでしまいそうになる。
- 作者: 島尾敏雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/10
- メディア: 文庫
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