雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

契丹伝奇集/中野美代子

中野美代子氏を知ったのは、澁澤龍彦経由であったか、それとも、福武文庫の「孫悟空の誕生」であったか、あるいは雑誌ユリイカで見知ったのか、今となってはもう定かではない。
中国文学を巨大な幻想の森へと塗り替えてしまうその文章に魅入ってしまった。
その後、何冊も読むうちに「幻想文学」的なカテゴリそのものに飽きて、やがて中野氏からも遠ざかっていった。
この本は、アジアを舞台とした幻想的な短篇集である。
不惑を過ぎた中年男が幻想がとか言っているのも、いささか失笑を買ってもしかるべきかも知れないが、ミステリ+SF(タイムトラベル)+桃源郷譚とも言うべき「耀変」と、カフカ的な不条理に満ちた「青海」は、久しぶりに読み耽ってしまう作品だった。
漢語由来の難字や当て字に満ち、虚実綯い交ぜに歴史上の人物が跳梁する文体に痺れてしまう。
久しぶりに他にも読み返してみようかと思った。

契丹伝奇集 (河出文庫)

契丹伝奇集 (河出文庫)

(「チャイナ・ビジュアル」は手放してしまったんだっけか?)