赤坂6丁目のマンションの立ち並ぶ一角に、勝海舟邸跡という碑がある。
当時を偲ばせるものは何もない。
その辺りは、氷川町といわれていたようだ。
なので、氷川清話という題なのだろう。
特に幕末好きという訳ではない。
だが、勝海舟は気になる。
江戸幕府の体制の内部で東奔西走し、明治政府の中核にも迎えられる。
この本は勝海舟を取り巻く人々が、様々なことを聞き出したのを集めたものらしい。
話の内容からすると、明治30年頃に書かれたようだ。
これらの断片を、名言として取り出すこともできると思うが、あまり意味が無いような気もしている。
誰かに向けて発した言葉が、前後を断ち切られて、独り歩きさせられるような、それは名言なのだろうか。
或いは、名言だと思った言葉が、前後の文脈で全く異なる意図であった、ということはないのだろうか。
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やはり、名言的な言葉を引用したほうが良いだろうか。
その方が、この本を語っているだろうか。
だが、「最近の奴らは」的な言葉が多い。
古代ギリシアにも在ったというから、何かを語りたい時の常套句かもしれない。
そうして語られた言葉には、現状に対する非同意・非肯定が籠められる。
あからさまな反対でなくても、同意しない、同意しがたい、肯定はできない、肯定したくない、そういったニュアンスがあるように見える。
だから、勝海舟の言葉を引用することだけは、現状に対するアンチというニュアンスを匂わせてることになる。
何かに対して、物申したいのならば、引用するにうってつけの言葉が並んでいる。
やはり引用するのはやめよう。