長いことこの本は買おうかどうしようかと迷っていた。
でも、先日思い切って買ったのだ。
買ったは良いのだけれど、今度は読もうかどうしようかと迷っていた。
(その隙に、電子書籍に手を出したりして)
ポール・オースターがラジオ番組のために、聴取者から話を募り、それを集めた本だ。
そんな感じの本だから、「深イイ話」の方に滑り出してしまうか、「すべらない話」の方にはまり込んでしまうような気がして、しかもそれを面白がってしまうことは不愉快なことだ。
もしかしたら、この本を読むことで、ポール・オースターに嫌気がさしてしまうかも知れない。
ためらっていた理由を言葉にしてみると、そんなところだ。
とは言え買ってしまったのだから、読まないわけにはいかない。
- 作者: ポールオースター,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/12/20
- メディア: 文庫
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読み始めてみると、半分は杞憂であり、半分は当たらずとも遠からじ、という気がした。
確かにこれは、ポール・オースター的な世界であり、嫌気がさすものではないだろうと思った。
そういう意味で、良い方に裏切られたと言える。
奇妙な味わいの短い話が次から次へと連なってゆく。
奇妙と言うだけでは済まされない、心打たれるような話も時々ある。
だが、所々、判らない話がある。
何かいまひとつ消化しきれないものが残されたままに、1巻を読み終える。
- 作者: ポールオースター,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/12/20
- メディア: 文庫
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2巻は戦争や死、夢といったテーマが続いていく。
ふと、様々な人の語りに取り巻かれているような気がする。
ようやくこの本の狙いのようなものが見えてきたようだ。
この本は、ポール・オースターを通して、アメリカの様々な人が語っている。
必ずしもオチがあるわけでも、深いことを言おうとしているのでもなく、肉声のようなものを聞かせている。
大声でもなく、囁きでもなく、ただ声がする。
物語ではない。
そして、多様な声の集まりが、相貌のようなものを取るであろうというのが、このプロジェクトだったのだと思った。
- 作者: ポール・オースター,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/06/29
- メディア: 単行本
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文庫も一冊にしてくれれば良いのに