雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ナショナル・ストーリー・プロジェクト/ポール・オースター

長いことこの本は買おうかどうしようかと迷っていた。
でも、先日思い切って買ったのだ。
買ったは良いのだけれど、今度は読もうかどうしようかと迷っていた。
(その隙に、電子書籍に手を出したりして)
ポール・オースターがラジオ番組のために、聴取者から話を募り、それを集めた本だ。
そんな感じの本だから、「深イイ話」の方に滑り出してしまうか、「すべらない話」の方にはまり込んでしまうような気がして、しかもそれを面白がってしまうことは不愉快なことだ。
もしかしたら、この本を読むことで、ポール・オースターに嫌気がさしてしまうかも知れない。
ためらっていた理由を言葉にしてみると、そんなところだ。
とは言え買ってしまったのだから、読まないわけにはいかない。


ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫)

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈1〉 (新潮文庫)


読み始めてみると、半分は杞憂であり、半分は当たらずとも遠からじ、という気がした。
確かにこれは、ポール・オースター的な世界であり、嫌気がさすものではないだろうと思った。
そういう意味で、良い方に裏切られたと言える。
奇妙な味わいの短い話が次から次へと連なってゆく。
奇妙と言うだけでは済まされない、心打たれるような話も時々ある。
だが、所々、判らない話がある。
何かいまひとつ消化しきれないものが残されたままに、1巻を読み終える。


ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)

ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)


2巻は戦争や死、夢といったテーマが続いていく。
ふと、様々な人の語りに取り巻かれているような気がする。
ようやくこの本の狙いのようなものが見えてきたようだ。
この本は、ポール・オースターを通して、アメリカの様々な人が語っている。
必ずしもオチがあるわけでも、深いことを言おうとしているのでもなく、肉声のようなものを聞かせている。
大声でもなく、囁きでもなく、ただ声がする。
物語ではない。
そして、多様な声の集まりが、相貌のようなものを取るであろうというのが、このプロジェクトだったのだと思った。


ナショナル・ストーリー・プロジェクト

ナショナル・ストーリー・プロジェクト


文庫も一冊にしてくれれば良いのに