何だか本を読まない時間が過ぎてゆく。
珍しいことなのだが、たまには良いかとも思う。
死にはしないし、生活にだって困らない。
だが、何だか後ろめたい気がする。
時間の無駄遣いというか、すべきことをしていない感じがする。
すべきこと?
その考えには、腐臭が漂ってはいないか。
なすがままに読みたい本が見つかるまで、じっとしてみる。
時折、何か手にとって読んでみる。
だがしっくり来ない。
それを繰り返し、忙しい生活に流されてゆく。
いっそ流されついでに、漂着してしまえば良いのだが、今のところあては無い。
そんななかで、読み終えた一冊がこの本である。
12人の作家の作品が収録されている。敬称略で書き出してみる。
吉田修一
森絵都
佐藤正午
有栖川有栖
小川洋子
篠田節子
唯川恵
堀江敏幸
北村薫
伊坂幸太郎
三浦しをん
阿部和重
何か他の本を読んだことがあるのは、3人ぐらいか。
そう思うと、自分の読書が偏っていることを思い知らされる。
すべての本を網羅的に読むことは出来ないが、こういったアンソロジーで既読率25%は低くないだろうか。
まあ良いかとも思っているので、どうでもいい話だ。
雑誌「ダ・ヴィンチ」に2003年に掲載されていた短篇を集めたものらしい。
帯の謳い文句は「作家12人のA面小説、B面小説」であるが、いまさらレコードですか、企画を考えた人間の世代が知れるな、なんてつまらない揚げ足を取ってみたくなる。
ストーリーを登場人物の両側から描くということだ。
久しぶりに読み返してみると、なかなか面白い。
それぞれの書き手の着想も、描き方も、工夫が細やかだ。
そして、併せて収録されている市橋織江氏の写真の柔らかな光が上手く合っている。
もう少し本を読まない時間を過ごすだろう。