確か前にも読んだ気がするのだけれど、改めて岩波文庫版で読んでみる。
それにしても、最近の岩波文庫への偏重は如何ともしがたい。
読むに値する古典は岩波にしかない、と嘯いてみたって、読みの浅さでお里が知れるというものだから、単に想像力と意欲の欠如なんだろう。
それでも、とりあえず岩波文庫を読んどけば、それらしい読書家風になるってもんだ。
確かに、以前読んだ角川文庫の訳文の印象と違う。
原文を知らないから、この雰囲気が合っているのか良くは判らない。
だが、「耳なし芳一」「むじな」「ろくろ首」「雪おんな」といった話から受ける印象は、これらの話に最初に触れたときの感じに近い様な気がする。
現代の話ではないからそのまま信じるわけではないけれど、でもどこか身体の隅がむずむずするような、ちょっと恐ろしい感じがする。
こういった昔話は、作者があってのものではなく、誰もが知っている物語があって、誰にも真似できない語りがあるようなものだろう。
落語のように、どう語ってくれるのか、によって話の印象も変わる。
これは、ハーンの語りと、平井氏の語りが、上手く合っている様に思う。
そうして見ると、ハーンが捕らえようとしたのは、古い日本の怪奇趣味のようなものだろうと思った。
それも江戸時代に爛熟した「噺」の世界なのではないだろうか。

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