昭和初期の東南アジア。
金子光晴は日本を脱出し東南アジアを放浪し、やがてパリに行き着く。
「どくろ杯」「西ひがし」「ねむれ巴里」での旅の記憶より、この本に描かれる南国の風景は、生活の匂いがする。
日本人、中国人、マレー人、インド人、様々な民族がそこにいて、それぞれがそれぞれのやり方で生きている。
この本に登場する日本人の姿でも印象深いのは、娘子軍、たぶん「からゆきさん」の話だ。
貧しい農村の娘たちが売られて、香港の女衒から満洲、中国内陸部、東南アジアへと送られる。
過酷な状況で身体を売って暮らし、情夫に金を巻き上げられて、故郷に戻ることなくやがて亡くなる。
彼女らが切り開いていった土地へ、男たちは商売目的で入り込んでゆく。
明治日本の植民地政策の末端の姿が、垣間見えているようだ。
- 作者: 金子光晴
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