久しぶりに読み返してみた。
以前読んだ時も思ったけれど、幸田文の文章は昔の東京のしゃべり言葉に近い感じがする。
親の世代というより、祖父母の世代の言葉のようだ。
中盤で後の平成天皇のご成婚の話題が出てくるので、1959年に初出の文章なのだと分かる。
1月から5月の日常の事、思い出話、などとりとめもなく、おしゃべりのように語られる。
上段に構えるのではなく、そういえばね、という風に綴られるのだけれど、時折、キラッと光る刃先のような鋭い言葉が混じる。
人生の諸先輩が次々と亡くなってしまう中で、こういう言葉を紡いでくれる方はありがたい。