雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

井上井月/春日愚良子 編・著

この本は1992年の初版本だが、恐らく96年ぐらいに買ったのだと思う。

今でこそ、井月についての本が何冊も出ているが、当時はこれしか手に入らなかったのだと思う。

井月の名前を知ったのは、つげ義春の「無能の人」の第6話「蒸発」である。

故郷を捨て、長野の伊那谷に住み着き、乞食同然で亡くなった井月のエピソードがいくつか描かれている。

漫画の主人公には大馬鹿ものだと切り捨てさせているが、あとがきによると続編を書くつもりだったようだ。

それはともかく、井月の俳句はどことなくすうすうと風が吹き抜けているような寂しさがある。

漂泊の俳人といえば種田山頭火の方が有名だろうし、句のスタイルもどちらかといえばオーソドックスな気がするが、それでも時折、深淵を覗き込んだようなすうすうと風が抜けていくような句がある。

井月自身の生涯については、「蒸発」のほうが面白く描かれているが、各句の解説もあり詩を鑑賞するには良いのではないかと思う。

岩波の「井月句集」もちょっと気になる。