宇野常寛氏の本を読むのはこれが2冊目である。
前に読んだのは、10年前だった。
図書館のふだん見に行かない「社会」の棚にあって、こんなところに?と思って手に取ってみた。
1995年と2001年をメルクマールとして、90年代からゼロ年代にかかる想像力を、アニメ、ドラマ、コミック、小説などから考察している。
自分では積極的には見に行ってはいないけれど、何となく知っている、例えば「エヴァンゲリオン」「デスノート」や宮藤官九郎や木皿泉らのドラマといった多岐に渡るメディア、ジャンルに対して、細かな議論を積み重ねて、作品の背後にあるコンテクストを想像力の変遷として読み解いている。
ほとんどが直接触れたことが無いけれど、その中でも平成仮面ライダーシリーズ(特に、クウガから竜騎に至る変遷)や高橋留美子の作品に対する考察は、自分の中でいま一つ腑に落ちなかったところの解消の役に立ったし、あの気持ちの悪い昭和ノスタルジーに対する指摘も参考になった。
想像力の変遷を追いながら、返す刀でゼロ年代以降の評論に対する苛立ちが表明されていると思った。
本書が著者のデビュー作だったと後から知り、確かに読者を煽るような書きっぷりもあるけれど、90年代以降、東日本大震災前までの閉塞感に対する考察として、ようやく腑に落ちる評論に出会ったように思った。