しばらく電源を入れてなかったKoboを立ち上げて、何となく読んでみた。
麻布にあったという偏奇館は空襲で焼け落ち、晩年の永井荷風は市川に暮らした。
復興してゆく東京を見るより、かつてあった東京の面影を見ようとするのが、晩年の随筆の中には色濃く表れている。
この小さな随筆も同じく市川の菅野から中山の郊外の景色を見ながら、かつての東京の姿を見ようとしている。
橋、水路、古木。
ここに現れるものは、「日和下駄」でもまた言及される。
後半は真間川が海に流れ込むところまでを追いかけようと散歩をするが、そこで見ているものは、郊外の風景ではなく、失われた東京の景色なのだ。