吉本隆明の講演集を読み返してみる。
一時期、吉本隆明ばかりを読んでいて、たぶんその頃に買ったのだと思う。
テーマ毎に収録されているので、年代もばらばらな気がするし、その辺りのことは解説に書いてあるのだろうけれど、あまり気にせずとりあえず読む。
語りが上手いかというとそんな事もなく、ときに脱線したり、べらんめえ調になったり、東京生まれ東京育ちらしいと言えばらしい。
第1巻は、家族、国家、共同体の話から、沖縄の話になる。
沖縄を考える上で、未開の辺境と捉えるのではなく、時間と空間を転換可能なものと捉えて、日本の社会制度の古層を読み、現代につながる歴史を読み解いていく辺りは読み応えがある。
また、天皇の執り行う儀式の中に、征服部族の儀式の痕跡を見出し、天皇制の権力構造の分析を行っている。
学術論文ではないので、大まかな論点のスケッチだけれども、興味深いものがある。
吉本隆明の評論が、この先も残るのかは分からないけれど、普遍的で根源的な何かに近づいているようには思った。
