ある方から譲ってもらったので読んでみる。
たぶん「裸の大将放浪記」の元ネタになっているのはこの本ではなかろうか。
編者の式場隆三郎は精神科医で、山下清の才能を世間に知らしめた一人だろう。
もう一人の渡邊實は、山下清がいた八幡学園の職員である。
山下清には放浪癖があって、八幡学園を抜け出したり、勤め先から逃げ出したりしている。
およそ20歳前後は、八幡学園から抜け出して松戸、馬橋、柏、我孫子の辺りで、弁当屋や魚屋に勤めたり逃げ出したりしている。
20代後半、戦中戦後辺りは、乞食のように茨城、栃木、福島にも放浪したり、精神病院に収監されたりしている。
その後、おそらく絵が売れたのか、普通の旅行のような放浪もある。
本人は精神薄弱というのか、軽い知的障害があって、句読点のないだらだら続く文章を書いていたようだが、読みやすく編集されている。
冒頭に式場隆三郎による山下清の生い立ちや放浪についての解説があり、その中でも地の文章が紹介されている。
最近の言葉で言うと、アール・ブリュットとかアウトサイダー・アートと呼ばれる作品群であり、その評価はわざわざ繰り返さなくても良いだろう。
この本を読むにつれて、およそ80年前の日本で知的障害者たちの生きる困難さと、山下清の言葉で映される社会での価値観が透けて見えてくる。
山下清本人の生涯を面白半分に眺めるというより、彼を取り巻いていた社会の不自由さと小狡さが透けて見えてきて、ちょっと嫌な気持ちになった。
