何だかんだ言いながら、また芥川を開いてしまう。
どこか牧歌的なタイトルとは裏腹に、男女の悲哀を描いた短篇である。
惚れた女へ会うための金を、自分の献体代金を前払いで貰うのだが、それもやがて底をついて、といったお涙頂戴話である。
このところ読んでいる芥川の短篇の中では、まだ健全なほうだと思った。
不健全な芥川作品というのは、何だかじくじくと傷口が膿んでいるような嫌な感じがする。
だからと言って健全な話が読みたいわけではない。
どこかじくじくとした自分の気持ちが、芥川の作品に向かわせているのだろう。