2010-01-01から1年間の記事一覧
ここで言ってるリーダーとは、管理職予備軍のいわゆる、チームリーダーの事ではない。 新たなビジネスを牽引する人材、新たな領域に踏み出していく人材、そういった姿である。 ということを理解するのに、十数ページもかかったのは、読み手が悪かったのだろ…
この本もまた図書館で借りた。 価格に含まれるコストの仕組みと、価格競争の仕組みをわかり易く解説している、といった感じに、この手の本を要約しても何も語ってはいない。 同じようにこの本を読んだからといって、経済の仕組みが判ったというつもりもない…
昔読んだ伊藤比呂美の詩は苦手だった。 苦手だったのに、この本はなぜか手放せないで、本棚の片隅にある。 (あんなに夢中になって読んだモーパッサンはあっさりと手放したのに、である) 久しぶりに手にとってみた。 あけすけに語られる性的なこと、猫、ア…
何となく詩が自分の中で盛り上がってきたので、久しぶりにボードレールを引っ張り出す。 もう背表紙は日に焼けて、オレンジ色だったはずが黄色とクリーム色の中間のようになっている。 前に読んだのはいつだったかもう覚えていない。 改めて読み出してみると…
この本に納められている二つの詩集「ambarvalia」は1933年(昭和8年)、「旅人かへらず」は1947年(昭和22年)に刊行されている。 一見すると、この二つの詩集は、大きく趣きを異にしているように見える。 「ambarvalia」は、古代ギリシア・ローマを題材に、…
ランボーを読むのは、二十歳より前のほうが良い。 そこにある激情や焦燥感のようなものに、もう反応できなくなっている自分に気づく。 詩というものが何であるか。 詩を読むという体験は、自分にとって何であるか。 そんなことに何かしらの答えを持ってしま…
今更ながらに杉浦日向子の作品の魅力について語るのは、かなり野暮なことに他ならないと思うのだが、ふと読み返してみたこの作品の巧さに、思わず読み耽ってしまった。 舞台は江戸時代の吉原の遊郭の、しかもその「二つ枕」の床の中。 4人の花魁と、そこに…
今更ながらに澁澤龍彦を読み返してみる。 あとがきで本人が自分のスタイルを見つけた一冊だと書いている。 1960年代に書かれたということもあるのか、文章はやや生硬な感じがする。 いや、そうではない。 この本におけるエッセイは、あるテーマの下に様々な…
いまさら説明する必要も無いが、東京で言うなら山手線のような、ぐるぐる廻る路線の電車のことなのだが、ちょっと気になってwikiを見てみると、大阪環状線や名古屋市営地下鉄、富山市電といったのもあるらしい。 いやいや、環状線そのものについて、何か書こ…
モラエスは明治・大正期のポルトガルのリスボンに生まれ、海軍士官から領事の仕事に移り、職を辞してから徳島に隠居し、徳島の地に没した。 徳島に隠居したモラエスはポルトガルの新聞に、日本に関するエッセイを寄稿している。 この本はそれらのエッセイを…
マインドセットとは、考え方のフレームワークと言えるだろう。 それは以下の11項目である。 1.変わらないもののほうが多い 2.未来は現在に組み込まれている 3.ゲームのスコアに注目せよ 4.正しくある必要はないということを理解せよ 5.未来はジグソーパズル…
この本は、金子光晴氏が昭和初期に東南アジアを放浪した頃、発表するあても無く書き綴っていた紀行文とでも言えようか。 なぜ放浪していたのか、それは他の著書のテーマであり、この本のテーマではない。 描かれるのは、放浪先の土地に暮らす人々の姿、貧し…
電車の中で本を読む場合、いつも座れる訳ではないので、片方の手は吊革に掴まり、もう片方の手で本を支えて読むことになるのだが、それを右手にする時と左手にする時がある。 やや混雑した車内だと、左手で吊革を掴む方が体の収まりが良い時と、右手で掴んだ…
最近何だか世間で、ぶれるだのぶれないだの、聞く機会が多くなったような気がする。 その違いにどれほどの価値があるのかは知らないが、ぶれないことの方がより好ましいように話されているようだ。 もっとも生死を分ける問題ではなく、単なるキャッチコピー…
いまさら説明するまでもなく、エンゲルスの主著だろう。 なぜにいまさらこの本を読むのか。 それを考えた際に、自分に対して以下のルールを適用することとした。1.政治的な意味合いは考慮しない マルクス主義の政治的思想的テクストとして読むのではなく、…
どうやって石川淳に辿り着いたのかはもう覚えていないが、「狂風記」や「至福千年」といった長編作品の物語世界にあっというまに虜になって、次から次へと読み耽った。 そこには、異形や無法の登場人物たちが跳梁跋扈し、あらゆる名のつく主義を唾棄し、ただ…
本を読む時に音楽が要るのか要らないのか、本当のところはよく判っていない。 少なくとも電車の中で読む時は、音楽プレイヤーで何かを聞いていることが多い。 だが、それは本の内容に合わせるというよりは、外界の音を遮るため、という気がしている。 だから…
昭和天皇が崩御し、平成に切り替わったのはもう二昔前の出来事だ。 猪瀬直樹氏はそこに歴史の裂け目が現れたという。 この本はその辺りの日本の姿を記録しようとする。 マスメディアは自粛というキーワードを濫用し、社会的な雰囲気を盛り上げた。 自民党政…
この本もまた図書館で借りた本である。 というか、絶版で店頭では手に入らない。 この本はボウルズの初期の短編を集めている。 ボウルズにとってのアラブとは、決して相容れない他者として立ち現れる。 物語世界に裂け目を入れ、悲劇をもたらす。 主人公たち…
改めて言うまでもなく、永井荷風の代表作だろう。 簡単に纏めるならば、主人公の作家が小説の構想を練るために、玉の井界隈を徘徊し、運命的な女性に出会うのだが、そこには恋愛の物語が成就しない、というより主人公が成就させない。 彼女が主人公にとって…
吉田健一は吉田茂・元首相の長男で、英文学者、評論家、小説家であると共に、美食家としても知られる、といった情報は改めて言うことでもないので、もうやめておこう。 この本に収められた「金沢」という中篇を最初に読んだときは、まずその語り口の虜になっ…
主人公の蕗子さんが、亡き父の遺品を整理しながら、古ぼけたノートを見つける。 そこへ「めぐらし屋」宛ての電話がかかってくる。 といった感じで物語が始まる。 物語の粗筋を書いてしまって、何か判った気になるのはやめようと思う。 この物語のキーワード…
この本もまた図書館で借りた本である。 1968年という年がどういう年であったのか、それはその時を生きた人間が語るべき事柄であり、そこに居なかった人間が何をか語っても、行ったことのない土地の旅行記のようなものではないだろうか。 著者は1968年には高…
「イカの哲学」とは、波多野一郎氏の論文であり、それに感銘を受けた中沢新一氏が紹介し、自らの平和論を展開している。 波多野氏は、満洲に配置された特攻隊員であり出撃直前に敗戦となり、そこからシベリアへ抑留され、帰国後、アメリカへの留学をする、と…
著者の小松和彦は民俗学者であり、「妖怪」や「憑依」「鬼」といったテーマの著書がいくつもある。 そういったテーマを通して、共同体の深層を探り出そうとしている。 この本では、「靖国問題」が話の発端である。 しかし、政治家が特定の神社に参拝すること…
満洲国に関する様々な本は出版されているが、この本は当時の写真や広告といった資料から、架空の旅行として再構成している。 正面立って政治問題や、歴史問題として論じるのではなく、言うならば裏側(むしろ側面か?)から、「満洲国」の姿を捉えようとして…
文芸評論にちょっと触れたことがあれば、吉本隆明の名前は耳にしたことはあるだろう。 私にとっての吉本隆明との出会いは、角川文庫の「共同幻想論」であり、高校生の脳味噌にはちょいと難しすぎた。 それでも、読み続けてしまったのは、やはり見ないふりを…
「ニュー・ローズ・ホテル」は成田空港の傍の荒れ地にある、簡単な足場が付けられたカプセルホテルの残骸でできた、まるで棺桶のようなホテルだ。 主人公は敵に追い詰められ、残された時間ももうほとんどない。 思い出のこのホテルで、いなくなった女の持ち…
どうやってこの本に辿り着いたのかはもう覚えていない。 藤枝静男という名前を、学校の授業では聞いた覚えがない。 私小説と言われる分野に興味はなかったので、作家の系譜のようなものから辿り着いたとも思えない。 だがともかく、この本に辿り着いてしまっ…
フェルナンド・ペソアは20世紀初頭のポルトガルの詩人である。 ペソアは異名を使いさまざまな詩を書いた、と言うよりは、異名のそれぞれが独立した人格であり、ペソアは彼らの名前で詩を発表した。 その詩のスタイルは、同時代の前衛芸術運動のスタイルを踏…