雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

追憶

ルワンダ中央銀行総裁日記/服部正也

ネットの知り合いが薦めていたので読んでみた。 日本銀行の銀行員がルワンダ中央銀行の総裁として、経済再建を担う。 これはフィクションではなく実話であり、日本人の支援活動というもの一端が見える。 著者の銀行員としての矜持と、ベルギーの旧植民地ルワ…

今夜、すべてのバーで/中島らも

もしかすると、中島らもを読むのは、これが初めてかもしれない。 Wikiで見てきたら、泥酔の上、転落死したのが2004年だった。 享年52歳。 今の自分の歳と重なると、ちょっと感慨がある。 だからといって何があるわけでもない。 この本はアル中で入院した顛末…

アルファベット群島/庄野英二

子供の頃に読んだ本をもう一度読み返してみたいと思っても見つからないことがある。 宮沢賢治や小川未明などはそんなことは無いのだが、経済高度成長期に創作された児童文学は何処に行ってしまったのか。 もっとも児童文学に限らず、大衆文学や中間小説やポ…

パワー・インフェルノ/ジャン・ボードリヤール

久しぶりにボードリヤールを読む。 ニューアカブームの終わり頃から久しく読んでいなかった気がする。 たぶんそんなに重要だとは思わなかったのだろう。 この本は9.11について書かれたものだ。 アメリカのグローバリズムを根底から覆す存在としてのテロリズ…

雀の手帖/幸田文

久しぶりに読み返してみた。 以前読んだ時も思ったけれど、幸田文の文章は昔の東京のしゃべり言葉に近い感じがする。 親の世代というより、祖父母の世代の言葉のようだ。 中盤で後の平成天皇のご成婚の話題が出てくるので、1959年に初出の文章なのだと分かる…

花嫁化鳥/寺山修司

ふとこの本のことを思い出して本棚から取り出した。 寺山修司の書いた紀行文である。 副題に「日本呪術紀行」とあるのは、サービスのような気がする。 日本の奇習、伝承を訪ね紹介する、という態を取りながら、その背後にある人々の姿を浮かび上がらせようと…

一〇一年目の孤独/高橋源一郎

高橋源一郎を知ったのは、高校生の頃。 「さようなら、ギャングたち」と、あと何冊かを読んだ記憶がある。 80'sの頃は、こういう小説が新しくて、なんだかすごいと思っていたのだ。 10代から20代の頃の価値判断なんてそんなもので、浅はかな知識と思考で選択…

織田作之助全集

断続的に読み続けていたので、半年ぐらい掛かったろうか。 織田作之助の名前は知っていてもほとんど読んでいなかった。 青空文庫で何篇かつまみ読みしてみたら、案外面白かったので、全集を手に入れてみた。 青空文庫で無料公開しているものが、纏まると有料…

ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険/ジョン・ハンケ

この本も図書館で借りた。 現NianticのCEOで、かつてはGoogle Earthの中心人物であったジョン・ハンケ氏の自伝、というか思い出話。 Field TripやIngressに対する氏の思いが溢れている。 たぶん彼の仕事に興味の無い人には何も響かないだろうか。 ジョン・ハ…

田中角栄100の言葉

この本もまた図書館で借りた。 今更ながらに田中角栄に興味が湧いたので読んでみる。 子供の頃、田中角栄、大平正芳、福田赳夫はものまね番組の定番だったな。 あの頃は田中角栄が何をした人かは知らなかったが、改めて読むとまともな事を言っていたことに気…

コンニャク屋漂流記/星野博美

星野博美を知ったのは、このブログをはてなに引っ越した頃に見ていた、とあるブログだったと思う。 そのブログがどこだったかもう覚えていないが、おそらく同年代だろうと思われるブロガーが、星野博美にシンパシーを寄せていたのを覚えている。 かれこれ10…

意識・革命・宇宙/埴谷雄高、吉本隆明

1975年の埴谷雄高と吉本隆明の対談。 テーマがあるようで無いような、対談として意見が平行線な感じがする。 「死霊」の話はともかく、革命や内ゲバ、戦前のプロレタリア運動について語っているのは、隔世の感がある。 吉本隆明は絶えず日本中世の仏教思想に…

ノストラダムスの大予言/五島勉

1999年7月に恐怖の大王が来て世界が滅ぶ、という予言は、小学校の教室の中で、幾度となく盛り上がった。 どうせ世界は滅びるんだから、やりたいことをやったほうが良い、という価値観は、1980年代後半からのバブル期の消費マインドの根底に繋がっていたよう…

阿修羅のごとく/向田邦子、中野玲子

子供の頃、NHKのドラマで観た記憶がある。 オープニングはトルコのCeddin Dedenで、これがとても印象的だった。 その後民族音楽を聴くきっかけだったと言っても、過言ではない。 名取裕子が出演してたように記憶していたが、これは勘違いだったようだ。 ドラ…

月の塵/幸田文

いまさらながら、幸田文の読者とは誰なんだろう、と思った。 懐古的な随筆はいつの日か考古趣味の対象になり、文学としては読まれなくなるのではないかという気がする。 幸田文が書いている対象について興味がある読者というのは誰なのだろう。 そして、幸田…

季節のかたみ/幸田文

幸田文の文章に惹かれている。 そう思って随筆を借りてきたのだが、ちょっと違うようだ。 悪くはないのだが、ちょっと思ったのと違うと言うか。 読者の勝手な思い込みなんだろうとは思うのだが、いまひとつに感じてしまうのは、老いの影が見える点だろうか。…

父・こんなこと/幸田文

幸田文は幸田露伴の次女である。 従ってこの「父」とは幸田露伴のことである。 幸田露伴の臨終記ともいえる表題作、その亡き父の思い出を語る随筆である。 幸田文の語り口は、東京の下町の喋りの息遣いが感じられる。 たぶん、言葉使いだけじゃなく、その背…

チベット旅行記/河口慧海

読了まで何ヶ月かかっただろうか。 まぁ、長い旅行記である。 それだけ道中の出来事やら沢山あるのだが、事の仔細が、上から目線なのが気になった。 明治維新の矜持を前提に他国を眺めているので、それはもう酷い言い様である。 冒険記として、或いは民俗学…

日本の面影/ラフカディオ・ハーン

久しぶりに、ラフカディオ・ハーンを読む。 この本はハーンの日本賛美の本である。 そうでない読み方ができないぐらい、日本を持ち上げているので、読んでいる方が気恥ずかしくなるくらいだ。 それにしても、いつから日本賛美のTVが、こんなに溢れているのだ…

鍵/谷崎潤一郎

本当は電子書籍版の全集で読んだのだけれど、そのことをいちいち言うのもどうかと思って、これからは気になったものだけ取り上げようかと思う。 「鍵」は何度も映画化もされているから、有名な作品だろう。 読まれないように小細工をしながら、読まれること…

ねらわれた学園/眉村卓

この本もまた図書館で借りた。 言うまでも無く、ジュブナイルの傑作としてよく知られている本である。 遥か昔の子供の頃に、NHKのドラマで見た記憶があるが、すっかり内容を忘れているので、読んでみた。 判りやすくてテンポの良いストーリーであり、あっと…

銀河鉄道の夜/宮沢賢治

久しぶりに読んでみた。 初めて読んだのは、小学生の時だ。 当時、何を思ったのか覚えていないが、当時から好きな作品であることは間違いない。 僅かに分別のついた大人になって読み返してみると、宗教的な点が気になってしまう。 もちろんそれが、弱点なの…

甲州郡内妖怪事件取り調べ報告/井上円了

この本もまた電子書籍で読んだ。 東洋大学、哲学堂の設立者である、井上円了が山梨で起こった妖怪騒ぎを検証するというもの。 実際どんな内容なのかを此処で明かすのは面白くないので行わない。 短いので興味のある方は読んで欲しい。 こういった事件が大騒…

空襲下の日本/海野十三

以前、文体が似ていると診断されたことがある海野十三を読んでみる。 戦争中の日本の人々の姿を描いている。 市街地の空襲が、まるで見てきたかのように書かれているが、この作品が発表されたのは、昭和8年である。 どこかで見聞きした情報を、東京の上に展…

狐/永井荷風

永井荷風の初期短篇である。 幼年期の記憶を元に書かれた物語は、実に鮮やかだ。 少年の心に映る薄暗い不気味な庭、威厳があって権力の象徴のような父、白い雪の上に滴る赤い血、そして絵草子の鬼のような大人の姿。 淡々と描かれながらどの場面も印象的だ。…

ONCE/谷川俊太郎

古本屋で見つけて、衝動買いした。 なぜ過去は斯くも恥ずかしいものなのか、と私は思っているのだが、谷川俊太郎氏は易々とそれを提示してしまっている。 本当は易々とではないのかもしれない。 10代の恥ずかしさとは違う、20代の恥ずかしさ、くだらなさ、駄…

タイムマシン/ハーバート・ジョージ・ウェルズ

2013年の読初めは、H・G・ウェルズのタイムマシンから始めよう。 この本は、中学生の頃、小岩の古本屋で100円で買った。 今もあの古本屋があるのか判らないが、小遣いを握り締めてチャリを飛ばして、買いに行った思い出がある。 街中にある小さな古本屋で…

マルテの手記/ライナー・マリア・リルケ

確か高校生の頃に読んだはずだ。 改めて読んでみると、自意識の塊のような文章がとても息苦しい。 特に事件や展開があるわけでもなく、思い出や吐露がただ連なってゆく。 そして、死の影や心霊現象まで登場する。 何故この本を読み通せたのか、あの頃の自分…

1984年/ジョージ・オーウェル

あまりにも有名な、SFの古典である。 出版されたのは、1949年だから、60年前に想像した35年後の憂鬱な未来であり、この記事を書いている28年前のあり得べき未来、という訳だ。 オーウェルが想像した、そのままの未来は出現しなかったが、質の悪い冗談のよ…

檸檬/梶井基次郎

梶井基次郎と中原中也は十代の頃に読んでおく本だと思っている。 というか、いまさら読むべき本ではない気がしていた。 ランボーもそうかも知れない。 もちろん、個人的な独断なので、正しいかどうかは知らない。 しかしそんな考えは、各社文庫本の夏のフェ…