雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

追憶

小泉八雲作品集

こういった作品集は年代で編まれていないので、何だか読みづらい気がするのだけれど、手軽に読めるのだからそう文句を言うものでもない。 小泉八雲の主だった作品を集めている。 が、紙の本で読んだ「日本の面影」などが入っていないのは残念だ。 もしかする…

マルジナリア/澁澤龍彦

かつて澁澤龍彦という名は、傍流の文学者の中でもビッグネームだったと思う。 澁澤龍彦の本を読んでいるというだけで、親の世代は眉をひそめ、同級生たちは「変な奴」という目で見ていたのではないかと思うし、そういった評価をあえて受けたくて手に取ろうと…

蒼い時/山口百恵

幼い頃にTVで観ていたし、結婚のニュースも引退コンサートもリアルタイムで知っていたけれど、山口百恵とはどんなアイドルだったのかを説明できるほど知らない。 当時の人気も、宇崎竜童&阿木燿子のヒット曲も知っているけれど、それは山口百恵その人を知っ…

父 吉田健一/吉田暁子

吉田健一の娘さんの本があると知り読んでみた。 生前の吉田健一を知らないが、語られる姿は文士というよりは、サラリーマンのようだと思った。 もっと破天荒だったり桁外れなところがあるのが文士だという読者の勝手な想像とは異なっている。 恐らく家族の目…

ほら吹き男爵の冒険/ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー

子供の頃、読んだ覚えがあるが、なんとなくしか覚えていない本である。 改めて光文社古典新訳文庫で読み返してみる。 ミュンヒハウゼン男爵は実在する人物であるが、モデルとしてこのような法螺話が世界中で広く読まれているというのは、なんとも愉快ではな…

象の記憶/川添象郎

この本もまた図書館で借りた。 高橋幸宏氏、坂本龍一氏の逝去に伴って、村井邦彦氏の動画やYMO結成秘話的なエピソードが溢れたように思う。 そんな中で、川添象郎氏の名前を知り、この本を知った。 川添象郎氏のエピソードについては、Wikipediaを始め様々に…

skmt 坂本龍一とは誰か/坂本龍一、後藤繁雄

良くも悪くも坂本龍一氏は変わったのだと思った。 それを否定する気はないけれど、考えの距離感を実感した。 いや、もともとそんなに距離が近いと感じていたのかどうかも疑問なのだが、遠いところの人のように思った、という言い方のほうがしっくりするかも…

音楽は自由にする/坂本龍一

坂本龍一氏の自伝である。 とはいえ、2009年に語っているので、それ以降の3.11や闘病生活等は語られていない。 知っていらエピソードもあれば、知らなかったエピソードもある。 こうしてまとめて読んでみて、坂本龍一氏は劣等感に対して色んな努力をして成し…

長電話/高橋悠治、坂本龍一

ふと読み返してみた。 高橋悠治氏と坂本龍一氏が、ホテルの内線電話越しに対談をしている本。 YMOが散開した頃、坂本美雨氏が子供で、両親の曲を聴かされて踊るエピソードが登場する。 若い人たちに関してとか、海外についての印象とか、当時から見た未来の…

東京者がたり/西村賢太

引き続き、西村賢太氏を読んでみる。 江戸川区の出身で、たぶん歳は少し上、バブルや東京の西とは距離のある感じで、なんとなく近しい感じがする作家が、どんな東京を見ていたのか気になった。 取り上げられている町、語られる言葉、どちらも私小説作家らし…

そして、みんなバカになった/橋本治

この本もまた図書館で借りた。 タイトルが全て「かな」っていうのも人を食った付け方だと思うが、やはり現代史の総括&ノスタルジーが続いていて、痛々しくなってくる。 そんな中でも見るべきところがあるとしたら闘病や老いに関するところだろうと思った。 …

たとえ世界が終わっても/橋本治

橋本治氏が残した言葉にどう思っているのかを検証する。 正直なところ、この本は9割退屈だった。 現実世界や歴史に対して、実はこうなんです、要するにこうなんです、といった言説は、ただの言い換えに過ぎないし、出オチの浅薄さにも似ている。 今さらに西…

ロックで独立する方法/忌野清志郎

ふらっと寄ったブッ〇オフで購入。 キヨシローが亡くなったのは2009年だが、当時はほとんど聴いたりはしていなかった。 RCサクセションを知ったのは、小学生の頃にタモリのラジオで聴いた「トランジスターラジオ」だったと記憶している。 この本は、キヨシロ…

霊長類ヒト科動物図鑑/向田邦子

何となく図書館で借りてみた。 物語を読む気が起きなくて、随筆のようなものばかり手に取ってしまう。 そういえばと思ってプロフィールを確認したら、1929年生、1981年没、亡父とほぼ同い年、そして没年を追い越してしまっていた。 死者は歳を取らない。 久…

七つの夜/ホルヘ・ルイス・ボルヘス

久しぶりにボルヘスを読み返す。 テーマは「神曲」「悪夢」「千一夜物語」「仏教」「詩について」「カバラ」「盲目について」 1977年ブエノスアイレスのコリセオ劇場での講演である。 恐らく78歳、自分の周りの年上の方々と比べてしまうが、ずっと瑞々しい感…

スティル・ライフ/池澤夏樹

久しぶりに何となく読み返す。 芥川賞を受賞した時は大学生の頃で、当時の友人から薦められて読んだ。 当時、読んでどう思ったのか覚えていない。 だが、単行本は今でも本棚に眠っているだろう。 表題作「スティル・ライフ」と「ヤー・チャイカ」の2編が収め…

江戸を歩く/田中優子、石山貴美子

この本も図書館で借りてみた。 何となく旅の本が読みたいと思った。 壮大な旅行記ではなく、小旅行のエッセイみたいなものが読みたいと思った。 この本は東京に残る江戸の痕跡をめぐるエッセイである。 写真も美しいが、江戸文化への切り込み方が鋭いと思っ…

ルワンダ中央銀行総裁日記/服部正也

ネットの知り合いが薦めていたので読んでみた。 日本銀行の銀行員がルワンダ中央銀行の総裁として、経済再建を担う。 これはフィクションではなく実話であり、日本人の支援活動というもの一端が見える。 著者の銀行員としての矜持と、ベルギーの旧植民地ルワ…

今夜、すべてのバーで/中島らも

もしかすると、中島らもを読むのは、これが初めてかもしれない。 Wikiで見てきたら、泥酔の上、転落死したのが2004年だった。 享年52歳。 今の自分の歳と重なると、ちょっと感慨がある。 だからといって何があるわけでもない。 この本はアル中で入院した顛末…

アルファベット群島/庄野英二

子供の頃に読んだ本をもう一度読み返してみたいと思っても見つからないことがある。 宮沢賢治や小川未明などはそんなことは無いのだが、経済高度成長期に創作された児童文学は何処に行ってしまったのか。 もっとも児童文学に限らず、大衆文学や中間小説やポ…

パワー・インフェルノ/ジャン・ボードリヤール

久しぶりにボードリヤールを読む。 ニューアカブームの終わり頃から久しく読んでいなかった気がする。 たぶんそんなに重要だとは思わなかったのだろう。 この本は9.11について書かれたものだ。 アメリカのグローバリズムを根底から覆す存在としてのテロリズ…

雀の手帖/幸田文

久しぶりに読み返してみた。 以前読んだ時も思ったけれど、幸田文の文章は昔の東京のしゃべり言葉に近い感じがする。 親の世代というより、祖父母の世代の言葉のようだ。 中盤で後の平成天皇のご成婚の話題が出てくるので、1959年に初出の文章なのだと分かる…

花嫁化鳥/寺山修司

ふとこの本のことを思い出して本棚から取り出した。 寺山修司の書いた紀行文である。 副題に「日本呪術紀行」とあるのは、サービスのような気がする。 日本の奇習、伝承を訪ね紹介する、という態を取りながら、その背後にある人々の姿を浮かび上がらせようと…

一〇一年目の孤独/高橋源一郎

高橋源一郎を知ったのは、高校生の頃。 「さようなら、ギャングたち」と、あと何冊かを読んだ記憶がある。 80'sの頃は、こういう小説が新しくて、なんだかすごいと思っていたのだ。 10代から20代の頃の価値判断なんてそんなもので、浅はかな知識と思考で選択…

織田作之助全集

断続的に読み続けていたので、半年ぐらい掛かったろうか。 織田作之助の名前は知っていてもほとんど読んでいなかった。 青空文庫で何篇かつまみ読みしてみたら、案外面白かったので、全集を手に入れてみた。 青空文庫で無料公開しているものが、纏まると有料…

ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険/ジョン・ハンケ

この本も図書館で借りた。 現NianticのCEOで、かつてはGoogle Earthの中心人物であったジョン・ハンケ氏の自伝、というか思い出話。 Field TripやIngressに対する氏の思いが溢れている。 たぶん彼の仕事に興味の無い人には何も響かないだろうか。 ジョン・ハ…

田中角栄100の言葉

この本もまた図書館で借りた。 今更ながらに田中角栄に興味が湧いたので読んでみる。 子供の頃、田中角栄、大平正芳、福田赳夫はものまね番組の定番だったな。 あの頃は田中角栄が何をした人かは知らなかったが、改めて読むとまともな事を言っていたことに気…

コンニャク屋漂流記/星野博美

星野博美を知ったのは、このブログをはてなに引っ越した頃に見ていた、とあるブログだったと思う。 そのブログがどこだったかもう覚えていないが、おそらく同年代だろうと思われるブロガーが、星野博美にシンパシーを寄せていたのを覚えている。 かれこれ10…

意識・革命・宇宙/埴谷雄高、吉本隆明

1975年の埴谷雄高と吉本隆明の対談。 テーマがあるようで無いような、対談として意見が平行線な感じがする。 「死霊」の話はともかく、革命や内ゲバ、戦前のプロレタリア運動について語っているのは、隔世の感がある。 吉本隆明は絶えず日本中世の仏教思想に…

ノストラダムスの大予言/五島勉

1999年7月に恐怖の大王が来て世界が滅ぶ、という予言は、小学校の教室の中で、幾度となく盛り上がった。 どうせ世界は滅びるんだから、やりたいことをやったほうが良い、という価値観は、1980年代後半からのバブル期の消費マインドの根底に繋がっていたよう…