2011-01-01から1年間の記事一覧
本について書かれた本について書くのは、どういうことか。 本について書くのは、どの本を選ぶか、その本をどのように書くのか、ということであり、本について書かれた本について書くのは、その術を知る、または再認識することなのではないだろうかと思ってい…
ギャラリストという職業をこの本で知った。 画商とは異なり、アーティスト側に立って、育てていくということのようだ。 この本では、 ・ギャラリストの仕事 ・アーティストはどこにいる? ・投資を考えている人へ ・アートを買ってみる ・アートビジネスの展…
バイクでのツーリングの醍醐味の一つに、地図を見ながら走行ルートを考える、というのは含まれていると思う。 だから、出発前に全ルートを決めてしまうのは、席に着いた途端にコース料理を全て食べようとしてしまうようなものだ。 地図を見ながら、迷いなが…
森村泰昌氏は自らが仮装し名画になるポートレイトを作成する美術家である。 当初、シミュレーショニズムとも称されていたような気がする。 この本は、森村氏の自己解説であり、現代美術に関する森村氏の解説でもある。 まず、「モナ・リザ」に扮するための分…
ある試みが成功であったかどうかは、何を以て判断するのだろうか、と考えたときに、例えば読み手に何をか残せたかどうかというのはあるだろう。 ただ、その読み手が本の著者が想定しているイメージと重なり合うとは限らない。 読み手それぞれによって評価が…
酒を呑んでいる時の馬鹿話は好きだ。 というか、むしろ馬鹿話しかしたくない。 深刻な悩みを聞きながら呑む酒はどんな味だか知らない。 この本は古代ローマの著述家プルタルコスが、宴会で話した話題を集めた、という体の随想集とでも言うべきだろうか。 全…
もし、石川淳を知らないなら、この本は読まない方が良いだろう。 石川淳は知らないが、取り上げられる人々に興味があったとしても、読まない方が良いだろう。 この本は、小林如泥、算所の熊九郎、駿府の安鶴、都々一坊扇歌、細谷風翁、井月、鈴木牧之、阿波…
何となく食べ物の本が読みたくなる。 かと言って、吉田健一や内田百けんを読みたい気分ではない。 高橋睦郎の「詩人の食卓」もふと頭をよぎったが、今回は止めておこうと思った。 それで、結局、杉浦日向子に手が伸びてしまう。 この本は、「柳多留」から選…
何となく、カート・ヴォネガットが読みたくなって、あれこれ本棚から引っ張り出しては拾い読みをして、これを選んだ。 出だしはヴォネガット自身が、第二次世界大戦におけるドレスデン爆撃についての本を書こうと思い立ち、再訪するいきさつなど語られる。 …
バロウズやギンズバーグの人となりについて、ここで書くのは止めておこう。 この本は何かというと、ラブレターであり、そして、旅行記でもある。 1953年にバロウズがパナマ、コロンビア、ペルー、エクアドルを放浪し、イェージを探し、いかがわしいところに…
久しぶりに人文系の本が読みたくなる。 そこで、ちょっと気になっていた、リバタリアニズム関連の本を図書館で借りてみた。 リバタリアニズムとは何か、という概説のさわり、ちょっと広めに俯瞰することができるような本だ。 もちろんこれで判ったような気に…
偶々、図書館で目に留まったので借りてみた。 幸田文は幸田露伴の娘であり、墨田区向島に生まれ、中央区新川に嫁ぎ、その後、一時、台東区柳橋に身を寄せていたとのこと。 この本は、そんな幸田文の作品から、隅田川を中心に、水辺の風景に関わるものを集め…
茶道というものに興味が無いわけではないけれど、どうも自分には合わない気がする。 だが、茶室やら茶そのものには、何とはなしに惹かれるものがある。 もてなしとしての茶会が開きたいわけでも、そこに招かれてみたいわけでもない。 ましてや、そこで人間と…
久しぶりに江戸川乱歩を引っ張り出して読んでみる。 やはり、「人間椅子」は傑作だ。 椅子職人が椅子の中に身を潜め、とある屋敷に運び込まれ、そこの夫人に一目惚れする。 倒錯した悦びの話のように記憶していたが、実はそうではない。 椅子に身を潜めたの…
ちょっと今まで読んでいなかった本を読んでみたくなった。 この本の前に読んだ「かもめのジョナサン」もそうだが、名作と言われているものには何かあるのだろうと思っている。 誰かが素晴らしいと思うものは自分だって素晴らしいと思うかもしれない、という…
なんとも薄気味悪い物語だ。 群れから離れたところで、餌をとることを軽蔑し、飛ぶことの限界を試しているジョナサン・リヴィングストンは、やがて長老から追放される。 そして、別の世界で飛ぶことの究極の意味を知る。 追放された、つまり選ばれたカモメ達…
安部公房が刺激的でたまらない。 この本は、安部公房が生前発表した、最後の長編小説である。 脛にカイワレ大根の生えた主人公が、病院に行ったところ、自走するベッドに乗せられ、冥界巡りをする。 そこに生とは何か、死とは何か、といった意味を求めるのは…
2007年の本である。 従って、内容はiPhone発表当初のものだ。 キーワード的にはWeb2.0、ユビキタス、フェデレート端末、といったところか。 何だろう? 他人の褌で相撲を取っている感じ。 iPhone 衝撃のビジネスモデル (光文社新書)作者: 岡嶋裕史出版社/メ…
この本は労作にして傑作であり、読み応えもしっかりとある。 ナマコを通じて、東南アジアにおける文化の伝播から、海洋民の流れ、大航海時代以降の植民地化、帝国列強の時代、そしてインドネシア、ニューギニア、オーストラリア、フィリピン、日本、蝦夷、朝…
正直なところ、この本の内容は響かなかった。 第1章の平和論議については、いまさら何も言う必要も無い。 第2章の物理学と他学問との比較についても、あまり興味は覚えなかった。 第3章の「物理学的世界観」についてはちょっと興味深かったものの、その後…
宮本常一の自伝である。 その平易で気負いの無い語り口で、すいすい読めてしまう。 山口県周防大島に生まれ、やがて柳田國男、澁澤敬三に導かれ、民俗学の徒となる。 だが、この本に書かれているのは、その生涯の一部分にすぎない気がした。 もちろん全てを…
ラスプーチンの名を知ったのは、いったいどこだったろうか。 ロマノフ朝ロシアの末期のシベリアに現れた、鞭身派キリスト教の修行僧であり、怪しげな教えと催眠術を操り信者を増やしてゆく。 ニコライ2世夫妻の息子、アリョーシャ(アレクセイ)を治癒した…
この本は安部公房氏の作品の中でも、マイナーな方なのではないだろうか。 舞台は終戦間際の満洲だ。 主人公Tの独白と回想を書き綴ったノートという体裁だ。 この物語を要約することは難しい。 詩的なるものを志向している表現と、物語を展開しようとする表現…
今はソ連という国もないし、アンドレ・ジイドもとうの昔に亡くなっている。 1936年だから、もう80年近く前に、ジイドがソ連に滞在した時の紀行文である。 ジイドは何冊かしか読んだことがない。 この本において、ジイドはそれまでソ連に抱いていた賛嘆と愛着…
十代後半のある日、自分にとって重要なことは「死」であると思った。 そう思ってしまった以上、この先、死はついてまわるような気がした。 だが、それを十分に考えるための言葉を持っていなかったので、それが何なのか、上手く理解も説明もできなかった。 死…
仕事でちょっと思うところがあり、図書館で借りる。 プレゼンにおける要点をコンパクトにまとめている。 それゆえ借りたのだ。 共感をつかむプレゼンテーション―「思い」を実現する32のチェックポイント作者: 菅野誠二出版社/メーカー: 日本経団連出版発売日…
「全地球凍結仮説」というのがある。 今から約6億年前、地球全体が氷に覆われ、巨大な雪球、スノーボールのようになっていたという。 この本は、そのスノーボールアース仮説を巡る、科学者たちの活躍と衝突を描いている。 仮説が誕生し、仮説を裏付ける証拠…
ミシェル・レリスを知ったのは、おそらくこの本だっただろうか。 出版年を見る限り、シュルレアリスム、或いは、バタイユからの流れで名前を知ったのかもしれない。 或いは、「闘牛艦」から辿って来たのかもしれない。 だから、民族学の名著と言われる「幻の…
ラテンアメリカという括りで文学を語ってしまうことにどれだけの意味が在るのか。 だが、世界文学に対して、各国の違いを明確に語れないのだから、ラテンアメリカという括りで見たほうが理解しやすい、って事もある。 そもそも、世界文学って言ってる時点で…
何となく寺山修司の言葉に触れたくなった。 この本は寺山修司の様々な著作から選び出された「気の利いた言葉」が、ローマ字でのアルファベット順のテーマに沿って並べられている。 意図したのか偶然なのか、「愛」に始まって、「夢」で終わる。 それぞれの言…