雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

文系

エジプトの空の下/飯山陽

引き続き、飯山陽氏の本を読む。 著者がエジプト滞在中の体験と、ムバラク体制の崩壊、モルシ体制の崩壊、という2つの革命を通じて、エジプトのイスラム教の姿を描いている。 平易な文章と、日常生活が中心の随筆なのだけれど、扱われているテーマは重い。 …

中東問題再考/飯山陽

知り合いから勧められていても、何となく読もうという気になれなかったのだけれど、今回のイスラエル紛争で読んでみようかという気になった。 著者について、ここで解説しなくても良いだろう。 この本は、イスラム社会で起きている問題の概観を解説した本だ…

過剰可視化社会/與那覇潤

どこでお勧めされたか覚えていない。 著者の與那覇潤氏についても良く知らないが、なるほどなと思うところの多い本ではあった。 コロナ禍に見舞われた日本社会を観察している。 社会学だろうか、評論家風な言説だと思っていたら、本人が評論家としての最初の…

新記号論/石田英敬、東浩紀

どこでおすすめされたか忘れたけれど、図書館で借りて読んでみた。 石田英敬氏は東大の教授らしい。 東浩紀氏は90年代からたまに読んでいる思想家、論客である。 タイトルの通り、記号論の刷新であり、今までの記号論が前提としていたアナログメディアからの…

明るい部屋/ロラン・バルト

久しぶりにロラン・バルトを読み返してみる。 この本は写真を巡る考察でありながら、彼の母親の思い出、そして家族の歴史に遡る本でもある。 ストゥディウムとプンクトゥムという概念から写真の意味を定義する。 写真が表しているコードがストゥディウム、そ…

死の海を泳いで/ディヴィッド・リーフ

息子であるディヴィッド・リーフ氏によるスーザン・ソンタグの臨終に至る回想である。 臨終記というと花屋日記が思い浮かぶが、こちらは感傷的な記憶の記録のようなものだと思った。 この本からソンタグの思考を読み取ろうとするなら、確率で人生を決めては…

他者の苦痛へのまなざし/スーザン・ソンタグ

本に呼ばれる、という感覚がある。 読みたいな、というのではなく、あ、これは読まないといけない本だ、と思ってしまう感じに近い。 読まなければいけない、というのは義務でもないし、何かタスク的なものでもないが、切迫感はある。 オカルトっぽい「呼ばれ…

戦争と万博/椹木野衣

とても面白かった。 1970年の大阪万博を起点に、1945年の広島爆心地、そして幻の皇紀2600年万博に言及し、美意識の根底にある「未来」という幻想、そして「環境」という考え、万博と戦争をつなぐ様々な要素を巡っている。 この本を要約するのは難しい。 登場…

日本の珈琲/奥山儀八郎

気になったので図書館で借りてみた。 コーヒーの歴史から、江戸時代の長崎におけるコーヒーの伝播、そして近代のカフェまで網羅的に言及している本である。 長崎まで行き文献に当たったり、訪日外国人のコーヒーに関する記述、海外漂流者のコーヒーに関する…

人生談義/エピクテトス

実はまだ読み終わっていない。 古代ギリシアの哲学者、と解説されているけれど、ローマ帝国で活動している。 古代ギリシアと古代ローマの関係が良く分かっていないかもしれない。 近代のモラリズムの源流を遡ってストア派に繋がり、エピクテトスに辿り着いた…

ベーコン随想録/フランシス・ベーコン

何となく読みたくなって、古本で購入。 ルネサンス以降、近代の哲学を見直す必要がある気がしている。 おそらく、ポストモダニズム的な思考を抜けて、前近代的な位置に戻るのか、ハイパーモダニズム的な位置にまで突き進むのかと考えると、もう一度、ヒュー…

カムイ伝講義/田中優子

気になったので借りてみた。 白土三平氏の「カムイ伝」を基に、江戸時代の人々の姿を描き出している。 特に農民、穢多、非人といった人々、そして戦いを行わなくなった武士、といったフォーカスの当て方が面白い。 そして、更には江戸時代の人々の価値観の推…

insight/ターシャ・ユーリック

確かラジオで紹介していたのを聴いて、図書館で借りてみた。 自己認識、マインドフルネス、そういったキーワードの本だと思う。 参考になる部分もあれば、そうでもない部分もあり、いったん内容は留保する。 病んで辞めてしまった後輩が、マインドフルネスを…

レジリエンス入門/内田和俊

何となく借りてみた。 最近、時々聞くキーワードであるが、レジリエンスとは回復とかそういう意味らしく、耐ストレスについての本である。 しかも、ちくまプリマー新書であり、悩める10代向けの内容だと思う。 覚えておくべきはエリスのABC理論、ABCDE理論だ…

スタンフォード式 最高の睡眠/西野精治

気になったので図書館で借りてみた。 睡眠の重要性について、実際のところ分かっていなかったのだと思わざるを得ない。 今にして思えば、夢を見ない時期が続いたのは質の低い眠りによって十分なノンレム睡眠だったのだ。 黄金の90分は忘れないようにしよう。…

中世かわらけ物語/中井淳史

ちょっと見かけ、気になったので図書館で借りてみた。 日本の中世における「かわらけ」という雑器をめぐる本である。 そもそも、かわらけとは何かから始め、形態の違いから作り方の違い、使い方、地域の差などを考察していく。 今でこそ、産業革命後の大量生…

原始仏典を読む/中村元

本棚から引っ張り出して読む。 たぶん読了していなかったようだ。 こういった本が何冊もあるような気がする。 岩波のセミナーの講義録をベースに、原始仏典といわれる初期の経を基に、仏陀の教え、仏陀の生涯、そして仏教徒としての振る舞いについて解説して…

ソクラテス・カフェにようこそ/クリストファー・フィリップス

たぶん読むのは2回目だろう。 ブログを始める前の頃だったと思うが、覚えていない。 ソクラテスの手法に従って、問いかけること、考え抜くことを、市民活動として行っている。 マルク・ソーテの本を読んだときに何となく違和感があって、改めて調べなおした…

独ソ戦/大木毅

とあるニュース解説で薦めていたので、図書館で借りて読んでみた。 歳を取って歴史モノを手に取ってしまうのは、衰退の証じゃないかと思っているのだけれど、そんなことを言ったら歴史好きな友達はどうなんだ、ということになる。 ましてや戦記なんて性にも…

下流志向/内田樹

この本もまた図書館で借りた。 ちょっと精神的に不安定で本が読める状態なのか不安に思っていたが、何とか読み通すことができた。 というのは、何かに集中することが難しいと感じていたからなのだが、何とか論旨が分かる程度には読めたと思う。 教育と労働、…

パワー・インフェルノ/ジャン・ボードリヤール

久しぶりにボードリヤールを読む。 ニューアカブームの終わり頃から久しく読んでいなかった気がする。 たぶんそんなに重要だとは思わなかったのだろう。 この本は9.11について書かれたものだ。 アメリカのグローバリズムを根底から覆す存在としてのテロリズ…

働く人のためのアドラー心理学/岩井俊憲

電子書籍で買った。 何だかひどく疲れているので、こういった本に眼が行ってしまう。 疲れる原因というのは分かっていて、単純なものではないし、回避すれば良いという類のものでもないので、それらとどう付き合っていくのかという方法を探さねばならない。 …

サードプレイス/レイ・オールデンバーグ

家庭と勤務先に次ぐ場所をサードプレイスと言う。 そのサードプレイスについて、各国の分析、考察をしている。 社会学的分析だと思うが、分析というよりは観察じゃないかと思った。 そして話がアメリカ中心なのも気になる。 サードプレイス――コミュニティの…

ソクラテスのカフェ2/マルク・ソーテ

実はこの本は三部作だったのだ。 第1部がパリのカフェでの哲学論議の話で、第2部、第3部がこの本である。 哲学史の読み解きが第2部、そして古代ギリシア都市国家の衰退原因の分析とニーチェから現代の読み解きが第3部である。 実は哲学カフェの話はおまけな…

ソクラテスのカフェ/マルク・ソーテ

この本もまた図書館で借りた。 何年か前に読んだ事がある気がする。 パリのカフェでの哲学論議を仕掛けていた哲学者らしい。 たぶん同じような事をやろうとしてた動きがあって、その頃に読んだような気がする。 アカデミックな場所から哲学を解き放って、人…

モンテーニュ 人生を旅するための7章/宮下志朗

最近、モンテーニュ、エラスムス、パスカルといった、西欧近代初頭の思想家が気になる。 中世から近代への転換は、神の視点から人間の視点という変更があったのではないか、と推測している。 だが一括りにそう言ってみたところで、何も考えたり言ったことに…

房総の捕鯨/金成英雄

この本も市川の古本屋で購入。 房総半島における捕鯨の歴史をざっとまとめている本。 元新聞記者の方らしく、文章は読ませる。 漁民が紀州からやってきて千葉に住み着いたという説は広まっているが、そうでは無いという意見もあるらしいことがこの本には登場…

ブラックマーケティング/中野信子、鳥山正博

この本も図書館で借りた。 中野信子氏をどこで知ったのかもう定かではないが、氏の本が読みたくて借りてみた。 脳科学者として氏の活動をどこかで見かけたのかもしれない。 鳥山正博氏は経営学者とのこと。 脳科学と経営学という組み合わせでマーケティング…

この人を見よ/フリードリッヒ・ニーチェ

久しぶりに読み返す。 確か正気だった頃のニーチェの最後の本だったかと。 持っているのは岩波文庫版と新潮文庫版。 プラトンの理想主義に対する明確な否定があった。 たぶん同じ頃に読んでいたのだが、どう思っていたんだろうか。 むしろ理想主義的な方に流…

ソクラテスの弁明/プラトン

持っているのは、新潮文庫版と角川文庫版。 読み返したのは田中美知太郎訳の新潮文庫。 ボールペンで傍線が引かれていて、今更ながらに、古本で買っていた事に気づいた。 たぶん高校生の頃に買ったのだろう。 ソクラテスが何を弁明し、何を主張したのか。 こ…