雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

科学と抒情/赤瀬川原平

確か記憶だと、ユリイカに連載されていた。 懐かしく読み返しもするのだけれど、細部は忘れていることも多い。 その中でも、広瀬隆についての話題が、気に留まった。 広瀬隆の顔が、前にも増して受難者の顔となっていると言う。 いろんなものを背負い込んで…

家族八景/筒井康隆

例えば、この物語の主人公は、ジュスティーヌなのかジュリエットなのか、と考えてみる。 もちろん、マルキ・ド・サドの、「ジュスティーヌ物語あるいは美徳の不幸」「ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え」のことである。 主人公の火田七瀬は他人の心が読め…

佃に渡しがあった/尾崎一郎、ジョルダン・サンド、森まゆみ

かつて佃島へは渡しに乗って行ったのだそうだ。 私が生まれる数年前に、その渡しは廃止になったらしい。 佃島という場所は、もともと漁師町であった。 その漁師町としての景色が、尾崎一郎氏の写真によって収められている。 東京のほぼ中心に位置しながら、…

チャイナタウンからの葉書/リチャード・ブローティガン

ブローティガンの詩集のアンソロジーから池澤夏樹氏が60編訳出した詩集らしい。 何度か読み返していたのだけれど、あとがきを読んでいなかった。 ブローティガンの詩に浸ろうと思っていたのだが、読んでみるとなんか違う。 それは、ブローティガンのせいでは…

インド夜想曲/アントニオ・タブッキ

何度でも読み返したい本のうちの一冊である。 なぜ私は読み返したいと思うのだろうか。 この小説は友人を探す物語であり、旅をする物語であり、あるいは存在の物語でもあり、物語についての物語でもある。 物語としての起承転結を味わいたいと思っているので…

サラサーテの盤/内田百けん

何が読みたいのかよく判らない時期に、自分がはまり込んでいる。 こういうときは、好きな本だけ読んでいよう。 というか、もともと好きな本だけ読み返すんじゃなかったっけ? まあ、いいか。 内田百けんの作品でも、やはり「サラサーテの盤」「東京日記」に…

銀座24の物語/銀座百点編

学生の頃に友人たちとした話に、 「東京と言ったらどこを思い浮かべるか?」 というのがある。 横浜方面の友人は渋谷と答え、多摩方面の友人は新宿、埼玉方面の友人は池袋と答えていた。 北関東から東北出身だったら上野や浅草とでも答えただろうか。 自分の…

回転どあ・東京と大阪と/幸田文

図書館で何となく借りてみた。 例えばこういった随筆を読んでいると、作者の生活がふっと見えるような気がする時がある。 そのイメージが合っているのか判らないが、自分の中の過去の映像と重なるように見える。 そこには作者の生活や思いが入っているからだ…

2011 危うく夢見た一年/スラヴォイ・ジジェック

2011年がどんな年だったのかを個人的に考えることとは別だ。 しかし、世界情勢で言えば「アラブの春」「ヨーロッパ危機」といったキーワードで語られる年なのだろう。 それらを楽観的に民主化の波や、資本主義の限界と片付けてしまうとしたら、既に思考が停…

アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス

この物語へのアプローチを、知性と倫理の相反する哀しみとして読むのが正門だとしたら、裏門はどこにあるのか探してみる。 知恵遅れの主人公チャーリーの報告書の体裁であるから、チャーリーを取り巻く人々の視点から考え直してみるのが有効だろうと当たりを…

カンバセイション・ピース/保坂和志

この本は、記憶と視覚についての小説だと思った。 あるいは、家と猫と横浜ベイスターズについての小説と言っても良い。 起承転結で表される大きな物語構造はほぼ無いに等しいのだが、登場人物たちの会話の中に畳み込まれている。 だから、一見すると何も起こ…