雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

シュルレアリスム

写真論/スーザン・ソンタグ

写真について読むべき批評は、ロラン・バルト「明るい部屋」とスーザン・ソンタグ「写真論」と知っていたのに、ソンタグを読んでいなかったのは、しばらく手に入らなかったのと、ちょっと距離を置いていた、というか、ちゃんと読めていなかったからだ。 それ…

イレーヌ/ルイ・アラゴン

初めて読んだのは高校生の頃だったと記憶している。 奢霸都館の洋書の雰囲気のする装丁の本だった。 何故この本に辿り着いたのかは覚えていない。 澁澤龍彦経由かもしれないが、まだこの頃はそこまで読み漁ってはいなかったはずである。 それはともかく。 ア…

超男性/アルフレッド・ジャリ

アルフレッド・ジャリは19世紀末のフランスの小説家で、正確にはシュルレアリスム運動に参加していたわけではないけれど、アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」において ジャリはアブサント酒においてシュルレアリストである。 と語られている。 巌…

ナジャ/アンドレ・ブルトン

ナジャは不思議な物語だ。 ナジャその人は不思議ではない。 ナジャは、プルトンが一目惚れしたちょっとエキセントリックな、言動が目立つ若い女というだけの気がする。 惚れた者の弱みであれやこれや翻弄されているブルトンだが、相手を神格化させたせいで、…

北園克衛詩集

北園克衛について語れるほど読み漁ってはいない。 今回読み返した思潮社「現代詩文庫1023」、中公文庫「日本の詩歌25」は読んだ。 沖積社から出ていた全集は、慌てて買い求めたものの、途中までしか読んでいない。 造形詩に着目した図書刊行会「カバンの中の…

デュシャンは語る/マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ

1960年代に行われたマルセル・デュシャンへのインタビュー本である。 何度か読んでいるが、内容を覚えていないのは、物覚えが悪いからだろう。 ブルトンのシュルレアリスムと距離を持ちながら、網膜的ではない美術を目指すデュシャンもまたシュルレアリスト…

ヴァニラの木/ジョルジュ・ランブール

これもまた「小説のシュルレアリスム」シリーズの一冊。 ブルトンの「シュルレアリスム宣言」にランブールの名前は出てくるのだが、実際日本語で読めるのはこの一冊だけではないだろうか。 思潮社のシュルレアリスム読本の中にも、人物録に名前はあるものの…

流れのままに/フィリップ・スーポー

シュルレアリスムの本を読み漁ったころには、既に手に入らなくなっていた小説のシュルレアリスムシリーズなのだが、最近、ふと思い出して検索してみたら手に入った。 便利な世の中になったものだ。 スーポーはブルトンとの「磁場」でしか読んだことが無かっ…

大いなる酒宴/ルネ・ドーマル

正確にはドーマルをシュルレアリスムの文脈で理解することは誤っている。 (いうまでもなく、グルジェフからの間接的な薫陶を受けた神秘主義者と捉えるのも、同様の誤りだ) だが、ブルトンだけがシュルレアリスムを体現していたのではないし、シュルレアリ…

ランスの大聖堂/ジョルジュ・バタイユ

バタイユの最初期の文章を集めた本。 ランスの大聖堂に対して、まだキリスト教を棄教していないバタイユの、ファナティックな礼賛は何だろう。 そこには私の理解しきれない何かがあって、それは存在の根本に関わるものであるような気がする。 バタイユの語る…

薔薇の葬儀/アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ

マンディアルグについて何か書こうとしても、特に思い当たらない。 そもそも、マンディアルグの小説が、シュルレアリスムであるのかどうか、判断に迷うところがある。 この本は最晩年の短篇集だ。 それぞれの作品に籠められた暗喩を解説しても、それは作品を…

ジャスミンおとこ/ウニカ・チュルン

なんとも哀しい本である。 狂気と正気を行き来する中で綴られたとも思える手記には、理解ができない箇所も多いが、強迫観念的に連ねられる意味やイメージが、読み手に哀しさを想起させる。 なぜ、彼女がそう思うのかは、ほとんど理解できない。 だが、そう思…

大いなる自由/ジュリアン・グラック

だいぶ前から読みかけだったので、改めて読み返してみる。 この本は各篇が数ページから成る散文詩である。 恐らく、眼に見えるものと、そのレトリックの意外性が、詩情を呼び起こすのであろう。 だが、パリの街並みにも、フランスの田園風景にも興味はない。…

夜なき夜、昼なき昼/ミシェル・レリス

ミシェル・レリスを知ったのは、おそらくこの本だっただろうか。 出版年を見る限り、シュルレアリスム、或いは、バタイユからの流れで名前を知ったのかもしれない。 或いは、「闘牛艦」から辿って来たのかもしれない。 だから、民族学の名著と言われる「幻の…

類推の山/ルネ・ドーマル

ルネ・ドーマルの人となりは、巌谷国士氏がこの本の解説として、詳細に紹介されているので、ここではあまり書かない。 仲間たちと「Le Grand Jeu」(巌谷国士氏は「大いなる賭」、生田耕作氏は「大賭博」と訳されているようだ)という雑誌を発行し、シュルレ…

神の裁きと訣別するため/アントナン・アルトー

アルトーについて語ろうとすると、どんな言葉も適切でないような気がしてしまう。 読んでいる時の高揚感と裏腹に、何か言葉を発してしまうと、本当は理解できていないような気がしてくる。 それは、アルトーの語る言葉と、自分の語っている言葉の距離が問題…

シュルレアリスム宣言・溶ける魚/アンドレ・ブルトン

アンドレ・ブルトン亡き後、運動としてのシュルレアリスムは終息し、既に過去の芸術運動の一つとして、博物館に飾られるべく存在になったのだ、と解説されたとしても、どこかで納得していない自分がいる。 それは、背伸びした中学生が、この本を理解できてい…

ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト/アントナン・アルトー

しかし、何度読み返しても、この本は飽きない。 そして、脳ミソが痺れたような、あるいは眩暈のような感覚になる。 ヘリオガバルスは、218年に14歳で即位し、222年に18歳で殺害された、バッシアヌス家のローマ皇帝である。 性的放縦、退廃、浪費、美食(とい…

自由か愛か!/ロベール・デスノス

ロベール・デスノスの小説?または散文詩である。 初期のシュルレアリスムに参加し、「シュルレアリスムの真実に最も近づいた人物」と、ブルトンをして言わしめたにも拘らず離反し、WW2ではレジスタンスに参加し、ゲシュタポに捉えられ、チェコスロバキア…

シュルレアリスムの資料(シュルレアリスム読本〈4〉)

この本はモーリス・ナドーの「シュルレアリスムの資料」のほぼ全訳とのこと。(ほぼというのは何だろうか) 時系列にシュルレアリストたちのパンフ、ビラといった類の文章と、それらの挑発に対する反論などが収められている。 シュルレアリストたちは内部対…

有害な物語/ジョイス・マンスール

眠りに入るのが墜落ならば、目覚めとは何だろう有害な物語作者: ジョイス・マンスール,有田忠郎出版社/メーカー: 白水社発売日: 1984/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 「充ち足りた死者たち」が物語だとするなら、このマンスールの小説…

ニュー・アトランティス/ベーコン

きもちわるい(その2) 読み終わってからふと思い出したのだが、この物語の展開は、ドーマルの「類推の山」と設定が似ている。 どちらも絶海の辺境にある完結した世界が舞台だ。ユートピアの物語として、非日常的な時空を設定する。 ベーコンは、当時の知の…

カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢/マックス・エルンスト

目くるめくカルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢 (河出文庫)作者: マックスエルンスト,Max Ernst,巌谷国士出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1996/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見る 「百頭女」に続くエル…

充ち足りた死者たち/ジョイス・マンスール

蟹充ち足りた死者たち作者: ジョイス・マンスール,巌谷国士出版社/メーカー: 白水社発売日: 1985/02メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る ジョイス・マンスールはWW2後のシュルレアリスムの詩人、小説家である。 この本は第一…

黒いユーモア選集〈2〉/アンドレ・ブルトン

逸脱と回収黒いユーモア選集〈2〉 (河出文庫)作者: アンドレブルトン,Andr´e Breton,山中散生,窪田般彌,小海永二出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/08メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (8件) を見る そして、「ユーモア」とは何で…

黒いユーモア選集〈1〉/アンドレ・ブルトン

リトマス黒いユーモア選集〈1〉 (河出文庫)作者: アンドレブルトン,Andr´e Breton,山中散生,窪田般彌,小海永二出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/08メディア: 文庫 クリック: 9回この商品を含むブログ (18件) を見る ユーモアとは、というか、笑い…

デュシャンは語る/マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ

かわすデュシャンは語る (ちくま学芸文庫)作者: マルセルデュシャン,ピエールカバンヌ,Marcel Duchamp,Pierre Cabanne,岩佐鉄男,小林康夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1999/05メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 44回この商品を含むブログ (50件) を見…

アルゴールの城にて/ジュリアン・グラック

レトリック・非限定アルゴールの城にて (白水Uブックス)作者: ジュリアングラック,ジュリアン・グラック,安藤元雄出版社/メーカー: 白水社発売日: 1989/05メディア: 新書 クリック: 6回この商品を含むブログ (10件) を見る グラックが描いているのは、非限定…

城の中のイギリス人/アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ

闘牛と遠近法城の中のイギリス人 (白水Uブックス (66))作者: A・ピエール・ド・マンディアルグ,澁澤龍彦出版社/メーカー: 白水社発売日: 1984/11メディア: 新書購入: 4人 クリック: 12回この商品を含むブログ (14件) を見る マンディアルグが匿名で出版した…

シュルレアリスムと聖なるもの/ジュール・モヌロ

通路シュルレアリスムと聖なるもの作者: ジュールモヌロ,Jules Monnerot,有田忠郎出版社/メーカー: 吉夏社発売日: 2000/10メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (3件) を見る あとがきによると、ジュール・モヌロは一時期シュルレアリスムに…