雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

シュルレアリスム

デュシャンは語る/マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ

1960年代に行われたマルセル・デュシャンへのインタビュー本である。 何度か読んでいるが、内容を覚えていないのは、物覚えが悪いからだろう。 ブルトンのシュルレアリスムと距離を持ちながら、網膜的ではない美術を目指すデュシャンもまたシュルレアリスト…

ヴァニラの木/ジョルジュ・ランブール

これもまた「小説のシュルレアリスム」シリーズの一冊。 ブルトンの「シュルレアリスム宣言」にランブールの名前は出てくるのだが、実際日本語で読めるのはこの一冊だけではないだろうか。 思潮社のシュルレアリスム読本の中にも、人物録に名前はあるものの…

流れのままに/フィリップ・スーポー

シュルレアリスムの本を読み漁ったころには、既に手に入らなくなっていた小説のシュルレアリスムシリーズなのだが、最近、ふと思い出して検索してみたら手に入った。 便利な世の中になったものだ。 スーポーはブルトンとの「磁場」でしか読んだことが無かっ…

大いなる酒宴/ルネ・ドーマル

正確にはドーマルをシュルレアリスムの文脈で理解することは誤っている。 (いうまでもなく、グルジェフからの間接的な薫陶を受けた神秘主義者と捉えるのも、同様の誤りだ) だが、ブルトンだけがシュルレアリスムを体現していたのではないし、シュルレアリ…

ランスの大聖堂/ジョルジュ・バタイユ

バタイユの最初期の文章を集めた本。 ランスの大聖堂に対して、まだキリスト教を棄教していないバタイユの、ファナティックな礼賛は何だろう。 そこには私の理解しきれない何かがあって、それは存在の根本に関わるものであるような気がする。 バタイユの語る…

薔薇の葬儀/アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ

マンディアルグについて何か書こうとしても、特に思い当たらない。 そもそも、マンディアルグの小説が、シュルレアリスムであるのかどうか、判断に迷うところがある。 この本は最晩年の短篇集だ。 それぞれの作品に籠められた暗喩を解説しても、それは作品を…

ジャスミンおとこ/ウニカ・チュルン

なんとも哀しい本である。 狂気と正気を行き来する中で綴られたとも思える手記には、理解ができない箇所も多いが、強迫観念的に連ねられる意味やイメージが、読み手に哀しさを想起させる。 なぜ、彼女がそう思うのかは、ほとんど理解できない。 だが、そう思…

大いなる自由/ジュリアン・グラック

だいぶ前から読みかけだったので、改めて読み返してみる。 この本は各篇が数ページから成る散文詩である。 恐らく、眼に見えるものと、そのレトリックの意外性が、詩情を呼び起こすのであろう。 だが、パリの街並みにも、フランスの田園風景にも興味はない。…

夜なき夜、昼なき昼/ミシェル・レリス

ミシェル・レリスを知ったのは、おそらくこの本だっただろうか。 出版年を見る限り、シュルレアリスム、或いは、バタイユからの流れで名前を知ったのかもしれない。 或いは、「闘牛艦」から辿って来たのかもしれない。 だから、民族学の名著と言われる「幻の…

類推の山/ルネ・ドーマル

ルネ・ドーマルの人となりは、巌谷国士氏がこの本の解説として、詳細に紹介されているので、ここではあまり書かない。 仲間たちと「Le Grand Jeu」(巌谷国士氏は「大いなる賭」、生田耕作氏は「大賭博」と訳されているようだ)という雑誌を発行し、シュルレ…

神の裁きと訣別するため/アントナン・アルトー

アルトーについて語ろうとすると、どんな言葉も適切でないような気がしてしまう。 読んでいる時の高揚感と裏腹に、何か言葉を発してしまうと、本当は理解できていないような気がしてくる。 それは、アルトーの語る言葉と、自分の語っている言葉の距離が問題…

シュルレアリスム宣言・溶ける魚/アンドレ・ブルトン

アンドレ・ブルトン亡き後、運動としてのシュルレアリスムは終息し、既に過去の芸術運動の一つとして、博物館に飾られるべく存在になったのだ、と解説されたとしても、どこかで納得していない自分がいる。 それは、背伸びした中学生が、この本を理解できてい…

ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト/アントナン・アルトー

しかし、何度読み返しても、この本は飽きない。 そして、脳ミソが痺れたような、あるいは眩暈のような感覚になる。 ヘリオガバルスは、218年に14歳で即位し、222年に18歳で殺害された、バッシアヌス家のローマ皇帝である。 性的放縦、退廃、浪費、美食(とい…

自由か愛か!/ロベール・デスノス

ロベール・デスノスの小説?または散文詩である。 初期のシュルレアリスムに参加し、「シュルレアリスムの真実に最も近づいた人物」と、ブルトンをして言わしめたにも拘らず離反し、WW2ではレジスタンスに参加し、ゲシュタポに捉えられ、チェコスロバキア…

シュルレアリスムの資料(シュルレアリスム読本〈4〉)

この本はモーリス・ナドーの「シュルレアリスムの資料」のほぼ全訳とのこと。(ほぼというのは何だろうか) 時系列にシュルレアリストたちのパンフ、ビラといった類の文章と、それらの挑発に対する反論などが収められている。 シュルレアリストたちは内部対…

有害な物語/ジョイス・マンスール

眠りに入るのが墜落ならば、目覚めとは何だろう有害な物語作者: ジョイス・マンスール,有田忠郎出版社/メーカー: 白水社発売日: 1984/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 「充ち足りた死者たち」が物語だとするなら、このマンスールの小説…

ニュー・アトランティス/ベーコン

きもちわるい(その2) 読み終わってからふと思い出したのだが、この物語の展開は、ドーマルの「類推の山」と設定が似ている。 どちらも絶海の辺境にある完結した世界が舞台だ。ユートピアの物語として、非日常的な時空を設定する。 ベーコンは、当時の知の…

カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢/マックス・エルンスト

目くるめくカルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢 (河出文庫)作者: マックスエルンスト,Max Ernst,巌谷国士出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1996/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (6件) を見る 「百頭女」に続くエル…

充ち足りた死者たち/ジョイス・マンスール

蟹充ち足りた死者たち作者: ジョイス・マンスール,巌谷国士出版社/メーカー: 白水社発売日: 1985/02メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る ジョイス・マンスールはWW2後のシュルレアリスムの詩人、小説家である。 この本は第一…

黒いユーモア選集〈2〉/アンドレ・ブルトン

逸脱と回収黒いユーモア選集〈2〉 (河出文庫)作者: アンドレブルトン,Andr´e Breton,山中散生,窪田般彌,小海永二出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/08メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (8件) を見る そして、「ユーモア」とは何で…

黒いユーモア選集〈1〉/アンドレ・ブルトン

リトマス黒いユーモア選集〈1〉 (河出文庫)作者: アンドレブルトン,Andr´e Breton,山中散生,窪田般彌,小海永二出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/08メディア: 文庫 クリック: 9回この商品を含むブログ (18件) を見る ユーモアとは、というか、笑い…

デュシャンは語る/マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ

かわすデュシャンは語る (ちくま学芸文庫)作者: マルセルデュシャン,ピエールカバンヌ,Marcel Duchamp,Pierre Cabanne,岩佐鉄男,小林康夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1999/05メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 44回この商品を含むブログ (50件) を見…

アルゴールの城にて/ジュリアン・グラック

レトリック・非限定アルゴールの城にて (白水Uブックス)作者: ジュリアングラック,ジュリアン・グラック,安藤元雄出版社/メーカー: 白水社発売日: 1989/05メディア: 新書 クリック: 6回この商品を含むブログ (10件) を見る グラックが描いているのは、非限定…

城の中のイギリス人/アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ

闘牛と遠近法城の中のイギリス人 (白水Uブックス (66))作者: A・ピエール・ド・マンディアルグ,澁澤龍彦出版社/メーカー: 白水社発売日: 1984/11メディア: 新書購入: 4人 クリック: 12回この商品を含むブログ (14件) を見る マンディアルグが匿名で出版した…

シュルレアリスムと聖なるもの/ジュール・モヌロ

通路シュルレアリスムと聖なるもの作者: ジュールモヌロ,Jules Monnerot,有田忠郎出版社/メーカー: 吉夏社発売日: 2000/10メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (3件) を見る あとがきによると、ジュール・モヌロは一時期シュルレアリスムに…

アポリネール傑作短篇集/ギョーム・アポリネール

芽生えのようなアポリネール傑作短篇集 (福武文庫―海外文学シリーズ)作者: ギヨームアポリネール,窪田般彌出版社/メーカー: 福武書店発売日: 1987/01メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る アポリネールは、「シュルレアリスム」という言葉を生み…

ナジャ/アンドレ・ブルトン

誰かがそこにいたことだとかを思い出せるのだとしたらナジャ (白水Uブックス)作者: アンドレブルトン,巖谷国士出版社/メーカー: 白水社発売日: 1989/05メディア: 新書購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (10件) を見る ブルトンの代表作と言われて…

超現実主義宣言/アンドレ・ブルトン

へびのあし超現実主義宣言 (中公文庫)作者: アンドレブルトン,生田耕作出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/09メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 13回この商品を含むブログ (14件) を見る 第二宣言、第三宣言のための序、が読みたくて買う。しかし、…

百頭女/マックス・エルンスト

想像できないものを想像する百頭女 (河出文庫)作者: マックスエルンスト,Max Ernst,巌谷国士出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1996/03メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 45回この商品を含むブログ (54件) を見る 最初にこれを見たときに、エルンストが…

超男性/アルフレッド・ジャリ

かわりもの超男性 (白水Uブックス)作者: アルフレッドジャリ,渋澤龍彦出版社/メーカー: 白水社発売日: 1989/05メディア: 新書購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (15件) を見る 超高速の自転車競技と超絶倫の男性と金属と融合する肉体の小説、とで…