雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2024-01-01から1年間の記事一覧

美しい星/三島由紀夫

自らを宇宙人であると自称する家族の物語である。 父は火星人、母は木星人、息子は水星人、娘は金星人を自認している。 当然ながら、そういう人々と周囲との軋轢やら摩擦がある。 それは宇宙人だから故ではなく、周りと異なる概念や思想を持ってしまった故の…

動物化する世界の中で/東浩紀、笠井潔

東浩紀と笠井潔の往復書簡、という形式の対談とでもいうものだろうか。 1948年生まれの笠井潔と1971年生まれの東浩紀、どちらにも欠けているものがあって、どちらにも評価すべきところはある。 読んでいる自分はと言うと、年代的には東浩紀に近いけれど、思…

アブサンの文化史/バーナビー・コンラッド三世

ブルトンがジャリを評して ジャリはアブサントにおいてシュルレアリストである と書いていたので、実際、アブサン酒を呑んでみたいと思ったけれど、その前にアブサン酒とはどんなものなのか、ちょっとした本を読んでみることにした。 図書館の予約システムで…

イレーヌ/ルイ・アラゴン

初めて読んだのは高校生の頃だったと記憶している。 奢霸都館の洋書の雰囲気のする装丁の本だった。 何故この本に辿り着いたのかは覚えていない。 澁澤龍彦経由かもしれないが、まだこの頃はそこまで読み漁ってはいなかったはずである。 それはともかく。 ア…

超男性/アルフレッド・ジャリ

アルフレッド・ジャリは19世紀末のフランスの小説家で、正確にはシュルレアリスム運動に参加していたわけではないけれど、アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」において ジャリはアブサント酒においてシュルレアリストである。 と語られている。 巌…

ナジャ/アンドレ・ブルトン

ナジャは不思議な物語だ。 ナジャその人は不思議ではない。 ナジャは、プルトンが一目惚れしたちょっとエキセントリックな、言動が目立つ若い女というだけの気がする。 惚れた者の弱みであれやこれや翻弄されているブルトンだが、相手を神格化させたせいで、…

蟹工船/小林多喜二

名前は知っていても読んでいない作品は、いつになったら読むのか、あるいは一生読まずに死んでいくのか、という事を考えたことがある。 たぶん、これまで読んでこなかった経験からすると、よっぽど人生がガラッと変わるような出来事が無い限りは読まないだろ…

闇の都市、血と交換/栗本慎一郎、笠井潔

暇に任せて読み返す。 栗本慎一郎が講師、笠井潔が生徒で、経済人類学を講義する、というていのレクチャーブックシリーズの1冊である。 1985年の初版だった。 買った当時のことは覚えていないが、恐らく10代の頃に背伸びして読んだのだと思う。 人類学とは何…

平坦な戦場でぼくらが生き延びること 岡崎京子論/椹木野衣

椹木野衣による岡崎京子論である。 この本を買った頃、どこで何をしていたのか、ちょっと記憶が曖昧だ。 挟み込まれたレシートと本にかかってるブックカバーは、新宿ルミネにあった青山ブックセンターを示している。 2001年3月20日 18:27 以前勤めていた会社…

入浴の女王/杉浦日向子

暇に任せて、久しぶりに杉浦日向子を読み返す。 この本は全国の銭湯を巡り、そこで出会った人(老若男女)、銭湯内(女湯)の様子、酒や美味いもの、などが面白可笑しく語られる。 銭湯や町の歴史のようなものも少し触れられる。 ちょっとふざけ過ぎている面…

日本魔界案内/小松和彦

久しぶりに引っ張り出して読み返してみた。 民俗学の入口は小松和彦だった。 10代の頃に、鬼や異人、呪いに関する書籍を読んだと記憶している。 この本は、2002年に出版された日本各地の異界と繋がるような場所のガイドブックである。 当時、「パワースポッ…

足利義満 消された日本国王/小島毅

足利義満について知っていることと言えば、金閣寺を創建した室町幕府の将軍、というぐらいだった。 そんな自分でも、今谷明「室町の王権」を読んだ時は驚いた。 鎌倉幕府と大名たちが活躍する戦国時代の狭間にある室町幕府は、ちょっと地味な印象だし、南北…

サンカの真実 三角寛の虚構/筒井功

サンカについてというより、三角寛とはどのような人だったのか、という点に言及している本。 いささか筆が走ってジャーナリスティック過ぎるきらいもあるけれど、三角寛のサンカ本の元ネタについて検証し、暴いていく。 非定住の職能民が独自の社会を築いて…

蘇える変態/星野源

何となく星野源のエッセイを手に取る。 同時代の随筆というものは、出来事や意見が身近であるが故に、あまり手に取ろうと思わなくなった。 以前は評論やらも読んでいたはずなのに、いつからか煩わしく、空虚に思うようになってしまった。 それは作品のせいで…

飛ぶ男/安部公房

安部公房の遺品のワープロの中に残されていた物語である。 当然ながら作品として発表されたものでもないし、書きかけのまま残されていた未完成のもので、作者自身が公開を望んでいるとも思えないのだけれど、ファンとしては垂涎モノであることは間違いない。…

茄子/黒田硫黄

ふと読みたくなって、押し入れから引っ張り出して読む。 4つの軸の主人公がいる茄子に関連する連作短篇。 農家の合間に本を読んでいる高間、事業ををしていた親が夜逃げして弟たちの世話をしている高橋、協調性が無い国重と若隠居したい有野、スペインの自転…

教科書で読む名作 一つのメルヘンほか詩

教科書で読んだ詩の中で覚えているのは、中原中也、萩原朔太郎、安西冬衛ぐらいのものだろうか。 ブックガイド的に教科書を読んで、そこから図書館で本を探して、文学史から同じ流派に手を広げて、そうやっていつのまにか全然違う本を読むことになる。 名句…

教科書で出会った名句・名歌三〇〇

教科書に載っていた俳句や和歌ってどうだったのか、と思って、図書館で借りてみた。 確かに読んだ覚えのある句や歌が並んでいるが、あまりピンとこなかった。 たぶん学校で習ったときもそうだったのだと思う。 優れていないわけではないけれど、面白いと思え…

ペルソナ/中野信子

何となく読みたくなって手に取った。 何故読みたくなったのかは、たぶん何かしらの答えのようなものを期待していたのだと思う。 しかし、それが何の問だったのかもわからないくらい、どうでもいい話だったような気がしている。 それはともかく、この本は、中…

アフガニスタンの診療所から/中村哲

もともとちくまプリマリー新書に入っていた本らしい。 なので平易な言葉で、パキスタン、アフガニスタンの状況と、そこでの医療活動を自ら解説している。 こういった社会貢献活動は、自分の生活と遠いもので、そこに積極的にコミットしていない。 だからと言…

キャリア・アンカー/エドガー・H・シャイン

どこでおすすめされたのか覚えていないが、メモに残っていたので図書館で借りてみた。 自らのキャリアの指向性を考える上での助けになる本である。 が、これは30代の頃に読みたかった。 自らのキャリアプランについて、その頃、語ってくれる人はいなかった。…

知的生活の方法/渡部昇一

講談社現代文庫が創刊60周年で、その中でも最も売れた本が、この本だと聞いて図書館で借りてみた。 というのも、渡部昇一を読むのはこれが初めてである。 名前を聞き覚えがある程度で、ビジネスマンに人気がある保守系の論客という評判をどこかで仕入れてい…

酒道入門/島田雅彦

何か読むものはないかと図書館の書架を眺めていて見つけた島田雅彦の随筆である。 思い返してみると、小説は読んだことはあっても、随筆は読んだことがないなと思った。 この本はタイトルの通り酒にまつわる随筆である。 酒そのものに関する蘊蓄というよりは…

幽界森娘異聞/笙野頼子

久しぶりに、笙野頼子を読む。 いつ買ったのか覚えていないが、酔っぱらったときに買ったのではないはず。(確証はない) この本は、ストーリーはほぼ無い。 森茉莉と雑司ヶ谷から佐倉への引っ越しと猫たちについての、独白だと言い切ってみようか。 一人称…

北園克衛詩集

北園克衛について語れるほど読み漁ってはいない。 今回読み返した思潮社「現代詩文庫1023」、中公文庫「日本の詩歌25」は読んだ。 沖積社から出ていた全集は、慌てて買い求めたものの、途中までしか読んでいない。 造形詩に着目した図書刊行会「カバンの中の…

男の作法/池波正太郎

20代の頃は、池波正太郎なんて、一生読まないだろうと思っていたが、あれから月日が流れて、ついに買って読んでしまうことになるとは、自分の見通しの甘さに苦笑せざるを得ないのだが、酔っぱらった勢いで購入したと一縷の言い訳を残しておきたい。 どうやら…

頭の中がカユいんだ/中島らも

酔っ払って買ったのが、中島らもというのは、洒落にもならないセンスの悪い話なのだけれど、何となく読みたくなったのだ。 タイトルは記憶があったけれど読んでいなかったので、手に取ってみた。 一言で言うなら、八方破れのような小説だった。 あらすじを説…

考えよ!/イビチャ・オシム

久しぶりにオシムの言葉に触れたくて、ついネットでポチッと買ってしまった。 サッカーについてなにか言えるほど知っているわけでもないし、日本代表に熱狂するほどサッカー好きなわけでもない。 だが、昔読んだ「オシムの言葉」という本だったか、が何とな…

昭和23年 冬の暗号/猪瀬直樹

酔っぱらってふらっと入ったブッ〇オフで購入した本。 猪瀬直樹の本はこれで3冊目ぐらいだったと思う。 つまりほとんど読んでいない。 昭和20年のポツダム宣言の受け入れから昭和23年の東條英機の処刑までの昭和天皇、平成天皇、マッカーサー司令官の動きを…

完全独習統計学入門/小島寛之

統計学に興味が湧いたので読んでみた。 前半(第1部)は未だ追いついて行けたが、後半(第2部)は追いつけなかった。 理解力が落ちているのだろうか。 もう一度読まねば。 練習問題も解いていないし。 完全独習 統計学入門 作者:小島 寛之 ダイヤモンド社 Am…