引き続き島田雅彦。
出来の良い物語とは酔わせてくれるし、現実とそっくりの顔をしているのではないだろうか、と思っている。
日本の将来を憂う皇后陛下が主人公の、近未来の日本が舞台の物語である。
これは政治小説だろうか?
或いは、細部まで作り込んだ陰謀論の物語だろうか?
小説の中にある真実とは、事実と同じとは限らないし、むしろ、ものの見方や考え方が、現実の自分に影響を与えて、現実の見え方を変えてしまうものかもしれない。
この小説のモチーフの一つに、日露戦争以来、ユダヤ資本に隷属させられている日本という近代史観は、蔓延る陰謀論の類と同型だが、それを梃子に皇室による革命を夢見る物語というのは、物語としては面白いと思った。
それを信じるのか信じないのかは読者の自由であり、それが事実であるかどうかは小説とは関係が無い。
そしてあとがきまで読んで、これは三島由紀夫のモデル小説の手法を踏襲しているのだと気づいた。
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