雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2014-01-01から1年間の記事一覧

都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト/澁澤龍彦

今年の最後は澁澤龍彦になった。 ぽつぽつと寝る前に読んでいたので、約1ヶ月かかってしまった。 この本は最後の著作である。 改めて読んでみると、やはり良いものは良いのだと思った。 それこそ時代遅れのディレッタンティズムだとかいう評も、眼にしたこ…

パイドロス/プラトン

やっぱりプラトンかなと思って、他の本も読み返してみた。 何がやっぱりなのかというと、「プロタゴラス」を読んでやはりソクラテスを裏返してみるのが、良いんじゃないかと思ったのだ。 (しかしそれにしても、過去に読んだ時の「プロタゴラス」の感想を見…

プロタゴラス/プラトン

この対話篇におけるソクラテスの奇妙さが気になる。 支離滅裂というか、狡賢いというか。 高名なソフィストのプロタゴラスのもとを訪れたことを友人に話すソクラテスという設定の対話篇である。 「徳は教えられるのか」という命題に対して、ソクラテスは「教…

華麗なるギャツビー/スコット・フィッツジェラルド

久しぶりに引っ張り出して読んでみた。 だが、今ひとつ面白いと思えなかった。 以前は響いていたはずなのだが、今は響かないのはなぜだろうか。 グレート・ギャツビー (新潮文庫)作者: フィツジェラルド,野崎孝出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1989/05/20メ…

電子書籍など

電子書籍端末を買おうかと悩んでいる。 選択肢は、 Kindle Paperwhite (第6世代) ―Wi-Fi出版社/メーカー: Amazon発売日: 2013/10/22メディア: エレクトロニクスこの商品を含むブログ (135件) を見るKindle Paperwhiteか、 【送料無料】 KOBO 電子書籍リーダ…

僕のうつうつ生活 疲れた心の休ませ方/上野玲

この本もまた図書館で借りた。 とくにうつ病の自覚があるとかではない。 以前、自律神経失調症の傾向があると言われたから、何かと心配になっているというわけでもない。 まあ知っておいた方が良いかな、という程度の興味である。 なるべく軽い内容で、さら…

つっこみ力/パオロ・マッツァリーノ

図書館で借りてみた。 もともと自分自身が社会学とかマーケティング理論だとか、そんなに真に受けていないというか、話半分に聞いているので、この著者(自称イタリア生まれの30代だそうな)の言うことは、まあすんなり受け入れられる。 逆にこの本を読んで…

男どき女どき/向田邦子

自分がこうして向田邦子を読んでいるなんて、10代の頃には夢にも思わなかった。 この本は4篇の短編小説とその他エッセイを集めたものだ。 向田邦子は好きかと訊かれても、特に好きでもないと答えるだろう。 だが、なんでもない日常の表面のざわめきのような…

イン ザ・ミソスープ/村上龍

図書館でふと借りてみようという気になった理由はわからない。 だがそういった直観は時に正しい選択をするものだ。 久しぶりに村上龍の小説が面白いと思えた。 そして、たぶん最初に読んだ「限りなく透明に近いブルー」を思い出した。 この物語の粗筋は、こ…

独立国家のつくりかた/坂口恭平

図書館で借りてみた。 「オベリスク備忘録」で、この著者のことを紹介されていたのを読み、ちょっと興味が湧いたのだった。 ともあれ、読んでみたのだが、いまいち消化不良だ。 残念ながら、紹介したり、感想を書いたりすることが出来ない。 この著者の言っ…

染盛はまだか/清田聡

本棚の片隅から取り出してみる。 実は連載当初の印象があまりない。 当時、モーニングを買っていたはずなのだが、記憶に残っていなかったようだ。 とは言え、当時住んでいたマンションの近所の古本屋で見かけて、つい買ってしまったのだから、全く覚えていな…

櫻画報大全/赤瀬川原平

赤瀬川原平氏をひと言で言うなら、現代芸術家なのだろう。 しかし、何か違う。 言い表せていない部分が大きすぎるような気がする。 では何と言えば、上手く言い表すことが出来るだろうかと考えたときに、パロディストなのだろうと思う。 現代芸術の先端から…

カタロニア讃歌/ジョージ・オーウェル

この本はジョージ・オーウェルによる、1936年のスペイン内戦の記録である。 スペイン内戦は、他にもピカソの「ゲルニカ」、ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」、キャパの写真などでも知られているだろう。 オーウェルは反ファシズムの義勇兵として参加…

北原白秋詩集

何年ぶり、いや何十年ぶりに手に取ったのだろうか。 特に思い入れは無いのだけれど、何となく本棚に残っている。 最近の若者は北原白秋など手に取るのだろうか。 いや、自分の年代でさえ手に取らない気がする。 そう思うと、近代詩というのは、いったい誰が…

芸術原論/赤瀬川原平

少し前のことになるが、赤瀬川原平氏が亡くなった。 だからというわけでもないけれど、久しぶりに読み返してみた。 まるで赤瀬川原平の人生の総括のような本だと思った。 この本で触れていないのは、「新解さん」と「櫻画報」ぐらいなのではないだろうか。 …

ねこぢるうどん/ねこぢる

何となく読み返す。 もう最近はねこぢるを読む人もいないのではないだろうか。 それとも、一部に熱狂的なファンでもいるのだろうか。 ともあれ読み返してみた。 「たましい」「ひるね」「かぶとむし」の3篇は、ねこぢるにしか描けないんじゃないかと思う。 …

若きサムライのために/三島由紀夫

初めて読んだ三島由紀夫は、澁澤龍彦の日本文学アンソロジー「暗黒のメルヘン」に収められていた「仲間」だったかと思う。 恐らく高校生の頃だろうか。 あの頃は三島由紀夫は学校では教えていなかったっけ。 近代文学までがせいぜいで、現代文学は扱いきれな…

旅の時間/吉田健一

少し前に手に入れてたのだが、やっと読み終えた。 吉田健一の連作短編集である。 何となくではあるが、この本を良いと言ってしまうことは悔しいのだ。 読み通してみると「旅の時間」というタイトルも納得である。 この本には、生死にかかわるような大問題も…

北越雪譜/鈴木牧之

前から気になっていたので、図書館で借りてみた。 この本は江戸時代の新潟県塩沢の商人による随筆である。 雪国特有の風物や、塩沢に伝わる伝承などを紹介している。 本当に雑多な話なのだが、ガス田の話と雪男の話が記憶に残った。 他は、やはり雪に関する…

月夜の魚/吉村昭

この本もまた図書館で借りた。 月と夜と魚とは、何と完璧なタイトルだろう。 この本は、死にまつわる短編集である。 そして、吉村昭の本は初めて読んだ。 どの短編も、どうにもやりきれなさが残る。 こんな風に死を描かれると、何か忘れていたものを思い出し…

声の狩人/開高健

図書館で眼に留まった。 ぱらぱら捲ると、アイヒマン裁判の傍聴記が入っていたので借りてみた。 この本は、アイヒマン裁判中のイスラエル、核実験後のモスクワ、そして東ベルリンから西ベルリンへの移動、アルジェリア紛争中のパリ、そしてサルトルとの対談…

TOKYO NOBODY/中野正貴

いつも見ていない本棚の端にあったので、引っ張り出して眺める。 誰も写っていない東京の街の写真集。 銀座、渋谷、新宿、池袋、青山、お台場、芝浦、どこにも人がいない。 普段は人が溢れかえっている繁華街に、人がいないということの違和感。 たぶんそれ…

41歳からの哲学/池田晶子

誤解を恐れず言えば、なんて変わった人なんだろうと思った。 別に奇矯なのではないが、当たり前のことを大声で言い立てるような奇妙さだ。 時事ネタを取り上げてあれこれ言うのだが、ものすごく真っ当なことしか語っていない。 真っ当なのだが、それを大事で…

リトル・ピープルの時代/宇野常寛

久しぶりに読み応えのある評論だと思った。 読み応えがあるからといって、それは難解だということではない。 むしろ、すらすらと読めるのだ。 東日本大震災での日常と非日常という話から始まり、村上春樹の評論、「ビッグ・ブラザー」の自壊から「リトル・ピ…

転がる香港に苔は生えない/星野博美

香港が騒がしい。 民主化要求デモが衝突騒動にまで発展している。 そんなニュースを聞いて、この本をもう一度読み返してみようと思った。 この本は、中国返還前後の星野博美によるルポルタージュだ。 とはいえ、政治的な意図があるのではなく、自分の皮膚で…

大正野郎/山田芳裕

山田芳裕といえば、「へうげもの」なのだろうが、私はこのデビュー作ぐらいしか読んでいない。 芥川龍之介に憧れる平徹と、浅草の下宿先の娘さんの由貴ちゃんとのラブコメ、という線は、どうも後から取って付けたように思えてならない。 どちらかというと、…

ちぎれ雲/幸田文

この本は幸田露伴の思い出を、娘である幸田文が綴ったエッセイを集めたものだ。 幸田露伴がどのような人物だったのか、ということよりも、幸田文が父をどう思っていたのか、ということが伝わってくる。 しかも幕末生まれ、明治育ちの男が、娘と二人でどのよ…

1968年/スガ秀実

引き続きあまり手を伸ばさない分野の本を読む。 この本は、1968年に世界史的なターニングポイントがあったと主張している。 その論旨は、新左翼党派の動きを追いかけていくことで示している。 この本に登場するタームの多くは、恐らく自分より下の年代にはあ…

自由に生きるとはどういうことか/橋本努

世代で語ったり、時代を語ったりすることに、意味が無いと思っている。 だが時々、そういう感想をここに書いてしまうのは、実は面倒になっている時が多い。 1980年代の雰囲気、と言ってみたところで、自分が何を感じていたのかなんて、何も説明していないし…

音楽図鑑 エピキュリアンスクールのための/坂本龍一

同名のアルバムもあるが、これは同時に発売された奥村靫正のアートディレクションによるビジュアル本である。 本棚の片隅に残っていた。 ドゥルーズ=ガタリの「リゾーム」の引用や、浅田彰や村上龍の文章がタイポグラフィックによってちりばめられ、背景はカ…