2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧
「弓浦市」が読みたくて、図書館で借りてみた。 それは、こんな話だ。 来客中の主人公の小説家のところに、30年前に九州の弓浦市で会ったという女性が訪ねてくる。 再会できたことを懐かしがり、当時の思い出を語る。 だが、主人公には全く身に覚えがない。 …
旅先で出会うエキセントリックな人、或いは思いもよらない出来事、そんな小説といえようか。 そして読点も無く続いてゆく文章は、ある種のうねりのようだ。 その文体のリズムに乗れれば、物語に酔うことが出来るかもしれない。 悪く言えば荒唐無稽な物語かも…
初めて読んだ川端康成の作品がこの本だったのを覚えている。 「雪国」でも「伊豆の踊り子」でもなく、どうやってこの本に辿り着いたのかは、もう覚えていない。 表題作「眠れる美女」は、とある宿に、主人公である江口老人が訪ねるところから物語が始まる。 …
ヘッセを知ったのは、高校の倫理の授業で、「車輪の下」を読んだからだと思う。 だが、「車輪の下」がどんな物語だったのかも覚えていないし、そのときに買ったであろう文庫本も、もう本棚には見当たらない。 そんなヘッセの作品でも、この「シッダールタ」…
「散歩のとき何か食べたくなって」とは、なんと巧いタイトルだろうか。 つい手を伸ばしてみたくなるように、読者をくすぐる。 内容としては、思い出の中の美味しい店、と言ったところか。 恐らく著者の知識、思い出の全てを、さらけ出しているのではないだろ…
サンカとは何者か、三角寛とは一体誰か、それらについて何らか知らなければ、この本を読もうとは思わないだろう。 サンカとはどんな人々だったのか、という点については、あまり明らかになってはいないのが現状のようだ。 だが、そういった人々について、判…
ハンガリーのポラニー兄弟の弟。 兄は経済人類学者のカール・ポラニー(マジャール語では、ポラーニ・カーロイ)であり、その弟である、マイケル・ポラニー(ポラーニ・ミハーイ)は化学者にして、科学哲学者とでも言うべきか。 何よりも「暗黙知」を提唱し…
バナナを通して、フィリピンとアメリカと日本、生産者と地主と多国籍企業、様々な人々の姿、問題を浮き上がらせる。 国際社会における南北問題が単なる不平等貿易の是正に還元されるべき問題ではなく、様々な要因が絡み合ったものであることが判る。 単純化…
今度はバラードを手に取る。 この本は、「コンクリート・アイランド」「ハイ・ライズ」と共に、テクノロジー三部作とも称される。 だが、それよりもこの本は、類稀なるポルノ小説なのだと思う。 テクノロジーの発達が人間の心理にどんな影響を及ぼすか、とい…
別の本を読んでいたのだが、息抜きに読み始めたこちらの本が先に読み終わった。 怪奇譚と言いつつ、原題は「Cuentos Breves y Extraordinarios」つまり、Extraordinaryで短い話、普通じゃないぐらいのニュアンスだろうか。 それにしても、古今東西の文献から…
もう10年ぐらい前のことになるだろうか。 後輩とこんな会話をしたことがある。 「最近、何か読んでますか?」 「そうだねぇ、ボウルズとか…」 「どんな話なんですか?」 「一見、平和そうな主人公たちが、酷い目に遭うっていう、救いの無い話」 「…何でそん…