雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ヨオロッパの世紀末/吉田健一

もしかすると、吉田健一の批評を読むのは初めてかもしれない。 批評のようなエッセイのような、グニャグニャとした文章は分かりにくいので、批評には向いてないように思った。 でもそれは、読み手側の長いサラリーマン生活の因習で、先に結論を知りたがって…

うわさのベーコン/猫田道子

たぶん2000年頃に話題になったのではなかったろうか。 サブカル界隈で話題になってたように記憶しているが、相変わらず絶版のままらしい。 ふと思い出して読み直してみる。 改めて読み直してみて、この作品に漂う違和感のようなものは、詰まるところ稚拙さな…

うたかたの日々/ボリス・ヴィアン

名前は知っていても、手に取らなかった本のうちの一冊である。 なぜ手に取らなかったのかは分からない。 物語としては悲劇的な恋愛譚と言っていいのだろうか。 コランとクロエ、彼らの周りに、シック、ニコラ、アリーズ、イジスの6人が物語の中心にいる。 一…

最後まで、あるがまま行く/日野原重明

日野原重明は聖路加病院の院長などを歴任し、地下鉄サリン事件では聖路加病院を開放して救護にあたったり、105歳で天命を全うするまで医師として活躍されてて、以前通っていた人間ドックで名前を知っていた。 名前は知っていてもその著作を手にすることは無…

ラストワルツ/村上龍

村上龍の「すべての男は消耗品である」というエッセイを読んだのは、たしか大学生の頃で、後から振り返ってみればバブル末期の頃だった。 文化系サークルに属していると本を読む人間は多くて、酔っ払ったときのネタ話の一つに村上春樹と村上龍のどっちが好み…

本心/平野啓一郎

今までに平野啓一郎を読んだことがあっただろうか。 2005年からの読書記録としてのこのブログには記載は無いが、読んでも書いていないこともあるし、2005年以前に読んでいた可能性が無いことも無い。 この本を読もうと思ったきっかけも良く分からないが、未…

センセイの鞄/川上弘美

久しぶりに川上弘美を読んでみようと思ったのは、酔っぱらっていたからかもしれない。 酔った帰りにブッ〇オフで何となく買った。 何冊か読んだのが数年前だった気がしている。 川上弘美の小説は少女漫画的な印象がある。 少女漫画とは何か、という話はたぶ…

きみの言い訳は最高の芸術/最果タヒ

実は最果タヒの詩を読んだことが無い。 名前ぐらいは知っていて、詩人だという事と、ブログから注目されるようになった、という程度の情報しか知らない。 とはいえ、どんな文章を書くのか気になってはいて、ちょうど古本屋で見つけたので購入した。 恐らく親…

生き延びるために芸術は必要か/森村泰昌

森村泰昌は自らが絵画作品になるという手法のアートで知った。 その作品の意味を考えたこともなかったが、キャッチーでありながら、古典の意味を問い直す批評的な手法だと今さらながらに思う。 そこで、改めて著作を読んでみた。 芸術とは何か、まさに本のタ…

近畿地方のある場所について/背筋

おそらく3か月ほど待ってようやく借りることができた。 怖いと評判だけは聞いていたが、なるほどよくできていると思った。 ホラー小説を読むということは、恐怖するという娯楽であろう。 この物語での恐怖を盛り上げるために、笑いと不安定な動きのモチーフ…

マイ・ロスト・シティ/スコット・フィッツジェラルド、村上春樹訳

フィッツジェラルドを読んだのは何年ぶりだろうか。 もしかすると20代の頃読んだのが最後かもしれない。 手に取ったきっかけも覚えていない。 フィッツジェラルドのこの雰囲気は、当時どう思ったのだろう。 それでも、処分せずに本棚に残っていたということ…

岸恵子自伝ー卵を割らなければ、オムレツは食べられない/岸恵子

気になっていたので、図書館で借りてみた。 今さら説明も不要だろうが、稀代の大女優の自伝である。 凡そ自分の親と同世代、自分が名前を知ったころはパリ在住で、マリームのCMぐらいの印象だったが、その後、市川崑監督の「黒い十人の女」で再発見した。 と…

徘徊タクシー/坂口恭平

何となく借りてみて、一気に読んでしまった。 徘徊タクシーとは、徘徊する老人を乗せて、本人の行きたいところに連れていくサービスである。 認知症の老人は、世界が分からなくなってしまったのではなく、違う次元の世界を見ているのだという捉え方が中心に…

813/モーリス・ルブラン

8月13日に何か見覚えのある感じがして、軽く調べたら、アルセーヌ・ルパンシリーズの「813」だった。 そういえば読んだことあったっけ?と借りてみた。 小学生の頃、図書室で見たような気もするし、でもはまった記憶はない。 ヴェルヌは読み漁ったし、江戸川…

写真論/スーザン・ソンタグ

写真について読むべき批評は、ロラン・バルト「明るい部屋」とスーザン・ソンタグ「写真論」と知っていたのに、ソンタグを読んでいなかったのは、しばらく手に入らなかったのと、ちょっと距離を置いていた、というか、ちゃんと読めていなかったからだ。 それ…

さらば国分寺書店のオババ/椎名誠

全く内容を覚えていないので、改めて借りて読んでみた。 読んでみたが、たぶん初見なのではないかというぐらい覚えていなかった。 こうなると読んだという記憶自体が怪しい。 内容はというと、エッセイのような小説のような、業界裏話のようなものも混じって…

独立国家のつくりかた/坂口恭平

図書館で何となく借りてみた。 相容れるところは少ないのだけれど、ちょっと読んでみようかと思ったのは、今後の生活のことを考えて、何かヒントがあるかと思ったからかもしれない。 と言っても、やり方そのものを剽窃したり、先導されて行動を起こすつもり…

ぼくがいま、死について思うこと/椎名誠

椎名誠を知ったのは、ラジオの朗読で聞いた「さらば国分寺書店のおばば」であったと思う。 その後、何冊か読んだけれど、あまりピンと来ていなかったような気がする。 その「さらば国分寺書店のおばば」を図書館で探したけれど見当たらず、せっかくだからと…

凶夢など30/星新一

星新一は学級文庫に誰かが持ってきたのを読んだのが、最初のような気がする。 面白くて読み漁った気がするけれど、自分で買ったのは1冊ぐらいではないだろうか。 もう、どれが既読でどれが未読だったかあやふやだけれど、この本は未読だったようだ。 気の利…

中島らもの誰に言うでもない、さようなら/中島らも 鮫肌文殊

何となく借りてみたのだけど、ピンとこなかった。 読んだ記録として残しておく。 中島らもの誰に言うでもない、さようなら: It’s Only a Talkshow3 (ダ・ヴィンチブックス) 作者:中島 らも,鮫肌 文殊 KADOKAWA(メディアファクトリー) Amazon ランキング参加…

美しい星/三島由紀夫

自らを宇宙人であると自称する家族の物語である。 父は火星人、母は木星人、息子は水星人、娘は金星人を自認している。 当然ながら、そういう人々と周囲との軋轢やら摩擦がある。 それは宇宙人だから故ではなく、周りと異なる概念や思想を持ってしまった故の…

動物化する世界の中で/東浩紀、笠井潔

東浩紀と笠井潔の往復書簡、という形式の対談とでもいうものだろうか。 1948年生まれの笠井潔と1971年生まれの東浩紀、どちらにも欠けているものがあって、どちらにも評価すべきところはある。 読んでいる自分はと言うと、年代的には東浩紀に近いけれど、思…

アブサンの文化史/バーナビー・コンラッド三世

ブルトンがジャリを評して ジャリはアブサントにおいてシュルレアリストである と書いていたので、実際、アブサン酒を呑んでみたいと思ったけれど、その前にアブサン酒とはどんなものなのか、ちょっとした本を読んでみることにした。 図書館の予約システムで…

イレーヌ/ルイ・アラゴン

初めて読んだのは高校生の頃だったと記憶している。 奢霸都館の洋書の雰囲気のする装丁の本だった。 何故この本に辿り着いたのかは覚えていない。 澁澤龍彦経由かもしれないが、まだこの頃はそこまで読み漁ってはいなかったはずである。 それはともかく。 ア…

超男性/アルフレッド・ジャリ

アルフレッド・ジャリは19世紀末のフランスの小説家で、正確にはシュルレアリスム運動に参加していたわけではないけれど、アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」において ジャリはアブサント酒においてシュルレアリストである。 と語られている。 巌…

ナジャ/アンドレ・ブルトン

ナジャは不思議な物語だ。 ナジャその人は不思議ではない。 ナジャは、プルトンが一目惚れしたちょっとエキセントリックな、言動が目立つ若い女というだけの気がする。 惚れた者の弱みであれやこれや翻弄されているブルトンだが、相手を神格化させたせいで、…

蟹工船/小林多喜二

名前は知っていても読んでいない作品は、いつになったら読むのか、あるいは一生読まずに死んでいくのか、という事を考えたことがある。 たぶん、これまで読んでこなかった経験からすると、よっぽど人生がガラッと変わるような出来事が無い限りは読まないだろ…

闇の都市、血と交換/栗本慎一郎、笠井潔

暇に任せて読み返す。 栗本慎一郎が講師、笠井潔が生徒で、経済人類学を講義する、というていのレクチャーブックシリーズの1冊である。 1985年の初版だった。 買った当時のことは覚えていないが、恐らく10代の頃に背伸びして読んだのだと思う。 人類学とは何…

平坦な戦場でぼくらが生き延びること 岡崎京子論/椹木野衣

椹木野衣による岡崎京子論である。 この本を買った頃、どこで何をしていたのか、ちょっと記憶が曖昧だ。 挟み込まれたレシートと本にかかってるブックカバーは、新宿ルミネにあった青山ブックセンターを示している。 2001年3月20日 18:27 以前勤めていた会社…

入浴の女王/杉浦日向子

暇に任せて、久しぶりに杉浦日向子を読み返す。 この本は全国の銭湯を巡り、そこで出会った人(老若男女)、銭湯内(女湯)の様子、酒や美味いもの、などが面白可笑しく語られる。 銭湯や町の歴史のようなものも少し触れられる。 ちょっとふざけ過ぎている面…