個人的に島田雅彦ブームが来ているので、最近の短編集を借りてみた。
暗黒というのは、いささか諧謔味のあるタイトルだと思う。
とはいえ、心温まるような話ではなく、ちょっと斜に構えていたり、ちょっと不気味であったりする短編が収められている。
一つ一つについて細かな解説はしないけれど、東京西部、それも南西方面が舞台が多いのは、特徴的かもしれない。
高度経済成長期に生まれ育って、伝統や地域共同体から切り離されていて、マイルドヤンキー文化と共通するベースが多い、そんな背景から生まれてくる作品だと思った。
たぶん年代的には近しいのだけれど、異なる背景が見え隠れしているような気がする。
それよりある種の不協和音のようなものとして物語に組み込まれている死だとか過去だとかに、感傷的な身振りが全く無いとは言えないけれど、少し斜に構えて見ているようなところがあるように思った。
これらの物語が寓話としての意味を持つのは、その不協和音がゆえなのかもしれない。