雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

令嬢クリスティナ/ミルチャ・エリアーデ


令嬢クリスティナ

令嬢クリスティナ


ルーマニアどころか、ヨーロッパにすら行った事は無い。
物語の舞台はヨーロッパの平原の森の深い、たぶんルーマニアの村である。
そしてヴァンパイア、いやカーミラの物語である。
だが、あからさまな吸血の描写などはない。
それとなく仄めかされるだけだ。
古い領主の屋敷を使った宿屋が舞台となり、その領主と農民にまつわる忌まわしい伝承、領主の子孫の多少エキセントリックな女性たち、その宿に泊まることになった主人公たちが超常現象に巻き込まれる。
その超常現象は何かの因果論ではない。
別の世界からの訪れであり、その来訪自体が災厄なのではない。
来訪されるこちら側が、不吉な徴として錯乱するのだ。
それはまるで、中世の魔女狩りを暗示させる。
恋愛小説と暗黒小説が同居したかのようだ。