雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ムーン・パレス/ポール・オースター


忘れられない出会い(その2)

ムーン・パレス (新潮文庫)

ムーン・パレス (新潮文庫)


この本を知ったのは誰かの書評だったか、店頭で一目惚れだったのかもう定かではないが、タイトルと表紙がとても気に入ったのを覚えている。挟み込まれていたレシートからすると、もう10年以上前のことだ。その後、何度か読み返しているのは、内容もとても気に入ったからだし、あまつさえ、友達にも勧めた覚えがある。主人公が遺産として本を受け取り、それに囲まれた暮らしがうらやましくもあった。そんなエピソードはこの本全体の3割にも満たないのだが、まずそれでこの本に引き込まれていく。ストーリーは(あえてつまらない言い方をすると)死と再生の物語であり、古典的な教養小説の枠組みである。だが、それはこの本の魅力とは全く関係がない。小説は読まなければその魅力はわからないし、読む体験そのものが読ませる話であるかどうかの魅力であるからだ。その魅力を言うなら、この本に出会ったおかげで、幾分か私の人生が救われたような気がする。それは最初に読んだ時のことではなく、何かのときに読み返したくなる本のひとつになった、ということである。