雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ナジャ/アンドレ・ブルトン

ナジャは不思議な物語だ。 ナジャその人は不思議ではない。 ナジャは、プルトンが一目惚れしたちょっとエキセントリックな、言動が目立つ若い女というだけの気がする。 惚れた者の弱みであれやこれや翻弄されているブルトンだが、相手を神格化させたせいで、…

蟹工船/小林多喜二

名前は知っていても読んでいない作品は、いつになったら読むのか、あるいは一生読まずに死んでいくのか、という事を考えたことがある。 たぶん、これまで読んでこなかった経験からすると、よっぽど人生がガラッと変わるような出来事が無い限りは読まないだろ…

闇の都市、血と交換/栗本慎一郎、笠井潔

暇に任せて読み返す。 栗本慎一郎が講師、笠井潔が生徒で、経済人類学を講義する、というていのレクチャーブックシリーズの1冊である。 1985年の初版だった。 買った当時のことは覚えていないが、恐らく10代の頃に背伸びして読んだのだと思う。 人類学とは何…

平坦な戦場でぼくらが生き延びること 岡崎京子論/椹木野衣

椹木野衣による岡崎京子論である。 この本を買った頃、どこで何をしていたのか、ちょっと記憶が曖昧だ。 挟み込まれたレシートと本にかかってるブックカバーは、新宿ルミネにあった青山ブックセンターを示している。 2001年3月20日 18:27 以前勤めていた会社…

入浴の女王/杉浦日向子

暇に任せて、久しぶりに杉浦日向子を読み返す。 この本は全国の銭湯を巡り、そこで出会った人(老若男女)、銭湯内(女湯)の様子、酒や美味いもの、などが面白可笑しく語られる。 銭湯や町の歴史のようなものも少し触れられる。 ちょっとふざけ過ぎている面…

日本魔界案内/小松和彦

久しぶりに引っ張り出して読み返してみた。 民俗学の入口は小松和彦だった。 10代の頃に、鬼や異人、呪いに関する書籍を読んだと記憶している。 この本は、2002年に出版された日本各地の異界と繋がるような場所のガイドブックである。 当時、「パワースポッ…

足利義満 消された日本国王/小島毅

足利義満について知っていることと言えば、金閣寺を創建した室町幕府の将軍、というぐらいだった。 そんな自分でも、今谷明「室町の王権」を読んだ時は驚いた。 鎌倉幕府と大名たちが活躍する戦国時代の狭間にある室町幕府は、ちょっと地味な印象だし、南北…

サンカの真実 三角寛の虚構/筒井功

サンカについてというより、三角寛とはどのような人だったのか、という点に言及している本。 いささか筆が走ってジャーナリスティック過ぎるきらいもあるけれど、三角寛のサンカ本の元ネタについて検証し、暴いていく。 非定住の職能民が独自の社会を築いて…

蘇える変態/星野源

何となく星野源のエッセイを手に取る。 同時代の随筆というものは、出来事や意見が身近であるが故に、あまり手に取ろうと思わなくなった。 以前は評論やらも読んでいたはずなのに、いつからか煩わしく、空虚に思うようになってしまった。 それは作品のせいで…

飛ぶ男/安部公房

安部公房の遺品のワープロの中に残されていた物語である。 当然ながら作品として発表されたものでもないし、書きかけのまま残されていた未完成のもので、作者自身が公開を望んでいるとも思えないのだけれど、ファンとしては垂涎モノであることは間違いない。…

茄子/黒田硫黄

ふと読みたくなって、押し入れから引っ張り出して読む。 4つの軸の主人公がいる茄子に関連する連作短篇。 農家の合間に本を読んでいる高間、事業ををしていた親が夜逃げして弟たちの世話をしている高橋、協調性が無い国重と若隠居したい有野、スペインの自転…