これも所詮は物語
- 作者: A.ビオイ・カサレス,Adolfo Bioy Casares,荻内勝之
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1994/05
- メディア: 文庫
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この本における「豚」とは老人であり、「戦記」とは若者による老人狩りである。それだけでも、不快でダークな物語である。かといってヒーローやヒロインが活躍するファンタジーではなく、6月のブエノスアイレス(南半球なので冬)での1週間が、6人の老人を中心に暗く描写されている。以前読んだときは、老人問題の核にあるのは、老人が自分が老人であることを意識していないことにある、という印象だったのだが、改めて読むと、これは排除の集団心理の寓話であり、不満のくすぶりと捌け口の有り得そうな物語ということかもしれない。マグリットの絵のような、フィクションなのだけど、妙に現実感がある、ある種、シュルレアリスティックな物語と言えなくも無いのではないか?と感じる。