雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ヴァーミリオン・サンズ/J・G・バラード


廃墟の2,3歩手前で


J・G・バラードが亡くなったというニュースを見て、急遽、引っ張り出した。
バラードを知ったのはいつだったかもう覚えていない。
高校の読書感想文に「ハイ−ライズ」を選んだ。
その短編世界に惹かれつつも、そう読んではいなかった。
だが、クローネンバーグが「クラッシュ」を映画化したことで、再度、読み直すきっかけになった気がする。
この短編集は「ヴァーミリオン・サンズ」という、やや荒廃しつつある郊外を舞台にした作品をまとめている。
SF的な小道具も登場するのだが、むしろシュルレアリスム絵画を風景にしたような描写であったり、3人称的な視点で悲劇を風景と同等に描くような世界が印象的だ。
そこにはヒロイズムも無く、日常と非日常が同一の平面で描かれている。
廃墟の2,3歩手前で留まっている光景、それは、いつかどこかで見たような懐かしさを覚える。
合掌