雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

クラッシュ/J・G・バラード

今度はバラードを手に取る。
この本は、「コンクリート・アイランド」「ハイ・ライズ」と共に、テクノロジー三部作とも称される。
だが、それよりもこの本は、類稀なるポルノ小説なのだと思う。
テクノロジーの発達が人間の心理にどんな影響を及ぼすか、という思考実験としてのテクノロジー三部作のうち、この「クラッシュ」は肉体感覚としての自動車、そして支配/被支配関係(つまり、1対1の権力闘争)としてのポルノ小説を自動車事故における加害者/被害者関係や機械/肉体の衝突に重ね合わせることで、この上なく猥褻な物語を作り上げている。
直截なポルノ的なイコンもちりばめられているのだが、それ以上に自動車そのものに対するフェティシズム、自動車事故による傷跡へのフェティシズム、そして事故そのものの再現するというフェティシズムなのだ。
ここにあるのは、19世紀的な恋愛小説の枠組を踏襲したポルノ小説ではない。
何から何までフェティッシュであり、その象徴化の技巧を尽くして快楽にいたるという、根本において倒錯したポルノ小説なのだと思う。


クラッシュ (創元SF文庫)

クラッシュ (創元SF文庫)


初読はペヨトル工房


クラッシュ

クラッシュ


映画化はクローネンバーグ監督。観に行った時、R17指定だったので、ちょっとひるんだ記憶がある。



(そして、Bの読書、6冊目)