アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
- 作者: フィリップ・K・ディック,カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/03/01
- メディア: 文庫
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いまさら何か解説する必要があるだろうか?
映画「ブレードランナー」の原作であり、ディックの作品の中でも有名な作品であろう。
改めて読んでみると、こんなに暗いのかと思う。
デッカード夫妻の倦怠感、死の灰が降り注ぐ地球、デッカード自身の混乱、ふてぶてしいほどのレイチェルの憎悪、生命と人工生命の曖昧な境界線、生命に対する執着と憧憬、この物語を構成する要素は悉く暗い。
だがどんどん引き込まれてしまうのは何故だろうか?
ひとつはレプリカントの追跡の物語であり、ある種の冒険小説と読み替えることも可能では無いだろうか?
もうひとつはデッカード自身の世界観が変わってゆく教養小説のヴァリエーションなのかもしれない。
賞金稼ぎの対象としてのレプリカントに対して、感情移入してしまうことへの混乱、そして恋愛感情と裏切り、を通して、デッカードは別の世界観を得たのかもしれない。
だが、ラストシーンではデッカードは眠ったままだ。
成長しない教養小説、未来のないデッドエンドを暗示しているかのようにも思える。